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課題研究の相談窓口通信(2016年8月2日号)「ジャム製造機で人工臓器!?ーワクワクする夢を研究の原動力に変えてー」

2016.08.02
課題研究の相談窓口通信(2016年8月2日号)「ジャム製造機で人工臓器!?ーワクワクする夢を研究の原動力に変えてー」

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最近、ニュースで「再生医療」という言葉をよく聞きます。自分の細胞で臓器を作り治療を行う未来が語られていますが、現在は、シート状の細胞層の臨床試験が進んでいる段階で、立体的な人工臓器を作るには様々な課題が存在しています。「工学で創り出せないものは無い」という信念をもつ大阪工業大学の藤里俊哉先生は、ものづくりの力でその課題に挑戦をしています。

複雑な私たちの体
人の体は、約200種類、60兆個の細胞によって成り立っています。糊の役割をするコラーゲンでそれぞれの細胞同士がくっつくことで、皮膚や心臓などの立体的な「臓器」を形作っています。また、全ての細胞の隙間には血管が走り、血液によって、細胞が生きるために必要な酸素と栄養が送り届けられています。
生き物の力を使って人工の臓器をつくりたい
もともと建築や工学などものづくりに興味があった藤里先生は、「人の役に立つものを作ってみたい」という思いをもって工学部分に進み、人工心臓装置や非生体材料を使った人工血管の研究を行ってきました。しかし本物の代わりとなり得る人工臓器の開発は難しく、「スマートフォンのような高度で細かいものは作ることができるのに、なぜ生体は作れないのか」と悔しさを感じたといいます。kadaikenyuu_madogutitusin03_160801moji_pdf
「人工の臓器を作ることは工学者としての私の夢」と語る先生がめざすのは、タンパク質などの生物材料と培養細胞を合わせて作る人工臓器。しかし、ただ培養するだけでは臓器の形にはならず、増殖時に血管がないと栄養が届かずに内側の細胞が死んでしまいます。そこで、細胞が目的の形に沿って増殖するための「鋳型」を用意し、そこに血管を作ろうと考えたのです。鋳型の候補として先生が着目したのは、生物がもつ臓器のコラーゲン層でした。「人と臓器の大きさが似ているブタの臓器を取り出し、細胞を全てはがすと臓器の形をしたスポンジ状のコラーゲン層を取り出すことができる。そこに血管をはわせれば鋳型として使えるのではないか」と話します。
解決の鍵は身近なところに
コラーゲン層に1つでも細胞が残っていると拒絶反応が起こる可能性があるため、鋳型として使うには、臓器の細胞を完全に破壊することが必要です。しかし、なかなか適した方法はありませんでした。そんな中あるとき、先輩との雑談の中でふと浮かんだのが「ジャム製造機」でした。これは、果実の風味を逃さないよう、熱ではなく高い圧力をかけ細胞を破壊する装置です。すぐに試したところ、完全なコラーゲン層ができ、その後の実験で血管が再構築され鋳型として使えることが分かったのです。
夢をもつことが世界を変えるエネルギーとなる
現在、自身の臓器のコラーゲン層を利用し、がんの根本治療を行う臨床実験も成功し、実用化をめざしています。「無理なんちゃう?と言われても、流されずに追求できる夢をもつ事が大事。これは中高校生の研究でも同じです」と語る先生。夢についてワクワクすることが、研究のエネルギーとなり、困難を乗り越えることができるのです。「人工臓器の他にも、培養肉も作ってみたいんだよね!どんな味なのかな?」今日も先生のワクワクは尽きません。

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<取材した先生>
大阪工業大学 工学部生命工学科 医工学系 マテリアル分野
藤里 俊哉 教授
大阪府立三国丘高校出身。京都大学工学部高分子化学科卒業、1991年同 博士後期課程を修了し、同 生体医療工学研究センター研修員、1994年 国立循環器病センター実験治療開発部研究員、(1998年から2年間、カナダ・モントリオール総合病院研究員)、2003年 同 再生医療部研究室長を経て、2007年から 大阪工業大学工学部生命工学科教授。

 

やってみよう!細胞の足場「コラーゲン層」を取り出してみよう

実験! 骨をコラーゲンだけにしよう
細胞の足場となるコラーゲンは、心臓や肝臓、骨といった臓器に含まれています。実際に取り出してみてその様子を観察してみましょう。実験:骨をコラーゲンだけにしてみよう!
■用意するもの
ガラス瓶またはビーカー
生の鶏の手羽骨(なるべく肉をきれいに取っておく)
1規定程度の希塩酸(骨中のリン酸カルシウムを溶かす)
■実験方法
①手羽骨を希塩酸の入ったガラス瓶の中に入れる
②1週間~2週間置く
③手羽骨を取り出し、水でよく洗う
(塩酸が手につくと危険なのでゴム手袋してください。)
④手羽骨の様子を観察し、体内でのコラーゲンの働きを考察してみよう
記事イメージ_コラーゲン抽出のプロトコル_pptx<ポイント>
カルシウムを溶かしても、骨の形はそのまま残っています。それほど多くのコラーゲン等のタンパク質が骨に存在していることが実感できます。また、コラーゲン骨はしなやかでちぎれにくく、骨のしなやかさを作り、外部からの力で折れにくくしていることが分かります。※本コーナー記事は『教育応援プロジェクト vol.8』「学校でもできる!企業実験教室の実験プロトコル★公開」に記載の株式会社ニッピ様紹介のプロトコルから転載いたしました。

 

研究実践パートナー大学
ものづくり部門 大阪工業大学

 

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