ホーム 中高生研究者向け情報 「未知との遭遇」を体験できる、都内唯一の演習林/東京農業大学 奥多摩演習林

「未知との遭遇」を体験できる、都内唯一の演習林/東京農業大学 奥多摩演習林

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フィールドは、研究材料の宝箱だ。研究をスタートするための「なぜ?」を、誰でも見つけることができる。そしてフィールド研究を体感できる絶好の場所のひとつに、演習林がある。大学が教育・研究のために管理する森林で、国内で公私約30大学が学生実習や教育研究に利用している。その中で今回は、東京都内で唯一の演習林である、東京農業大学の奥多摩演習林を管轄する菅原泉教授にお話を伺った。

森の作り方、使い方を研究する

菅原さんの研究テーマは、「多様な森の造成」だ。現在の日本の山林は、高度経済成長期に広葉樹二次林(天然林が伐採などで一斉に消滅した後、自然状態や人為的に再生した森)が伐採され、スギを始めとする生育が早い樹木が植林されて形成された。「画一的に育て一気に伐採する林業は、収益性は上がる一方で森林環境を激変させます」。その結果、樹木以外の生物の多様性にも悪影響を与えてしまう。再び多様性のある森を、人為的に作り出すにはどうすればいいか。菅原さんは、演習林の中で十分に成熟した一定区画を皆伐したあと、広葉樹と針葉樹を区画ごとに整理して植えるか、入り乱れるように植えるか、また成長速度の違うそれぞれをどのようなタイミングで植えるのがいいか、等を研究している(写真)。
さらに菅原さんは、材木としての利用まで考えている。現在、国産の木材利用は非常に少なくなっている。植え方、育て方、現地での効率的な加工方法を研究し、画一的でない材木に新たな価値を作っていく。それを適度に利用しながら、森も維持されていく。そんな森と人間の良い関係性での共生を願い研究を続けている。

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自然の中は研究テーマにあふれている

森林の魅力を、「未知との遭遇の宝庫です」と表現する菅原さん。森に一歩足を踏み入れてみると、目に映るだけでも多様な動植物がおり、耳には様々な虫や鳥の声が入ってくる。普段、町中にいると感じることができない土や葉の匂いが鼻を刺激し、木肌や葉の手触りはひとつひとつ異なる。視覚、聴覚、嗅覚、触覚と、五感の多くを使って目の前にあるものを体感する中で、「これは何だろう?」という純粋な疑問が生まれやすくなるのだ。また、室内での飼育や培養のように人間のコントロール下にないため、予想外なことが起こりやすいのも重要だ。ある目的でフィールドへ出て行ったときに、別の発見をして研究のきっかけとなることも少なくない。
また近年では林業の省力化が課題となっている。そのために、森林構造をどうやって可視化するか、空間構造や斜面の向きを基にして間伐対象を情報学的に判断できるか、伐採した樹木をどのように乾燥させると効率的に木材にできるか、なども新しい研究テーマとなっている。理学、工学どちらの視点で見ても、森林は新たなテーマに出会える場所といえるだろう。

書を捨てよ、森へ出よう

奥多摩演習林は研究のみならず、地域社会とも様々な形で関わってきた。東京都下に立地しながらも、夜には都会では見つけることが難しくなった真っ暗闇となる。一方でそこは整備された森であり、研修センターなどの設備もある。「人が安全に関わりやすい森」である演習林は、ボーイスカウトの野営や看護大学の実習、消防署の山岳救助訓練などの場としても利用されている。大学生の実習期間との調整は必要としつつも、「色々な人に利用をしてもらいたい」と菅原さんは考えている。過去には子どもを対象に、森から取れる木を使った箸作りのイベントをしたこともあるという。樹種や、その中の部位によっても木材としての性質が異なり、多様性を肌で感じるきっかけになるはずだ。
中学校、高校において生徒たちが研究を行うことが求められるようになって久しい。代々テーマを引き継ぎながら進めるというやり方がある一方、新規に研究テーマを立てる際に、どこから考えるきっかけを得るか悩むことも多いのではないか。そんなときは、生徒たちとともに森へと足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

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東京農業大学 奥多摩演習林
菅原 泉教授

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