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中の人に聞いてみた「サイエンスキャッスルは、今後、何を目指すのか」

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立ち上げから9年目となるサイエンスキャッスルは、いよいよ次なるステージに突入するようだ。
「でも次なるステージってなんなんだ!」
そんな思いを抱きながら、主要メンバーを緊急招集。サイエンスキャッスル は、今後どんな進化を遂げていくのかこっそり聞き出すことにした。
(聴き手:佐野卓郎)

前田 里美(まえだ さとみ)Ph. D.
専門分野:Human Factors Psychology、人間工学、心理学

アメリカで知覚(特に視覚)をテーマにエンジニアとチームを組んで研究をしていた。Ph.D.(博士号)を取得後、帰国してリバネスに入社。「つべこべ言わず、とにかくやる」ことが自身の世界を広げると考えている。グローバルすぎる人材のひとりで、海外の中高生研究者との連携を推進しようとしている。現在は教育総合研究センター長を務めている。

西山 哲史(にしやま さとし) 博士(理学)
専門分野:分子生物学、発生工学

ミトコンドリア病の研究で博士号取得。リバネスでは長年、研究開発事業部を部長として牽引。常に研究のことばかりを考えている。現在は教育開発事業部長。中高生のための学会「サイエンスキャッスル」には、一方ならぬ思いを抱いている。

立花 智子(たちばな さとこ) 修士(生命科学)
専門分野:微細藻類

微細藻類が蓄えるデンプンの研究をしていた。研究は「熱」から始まると信じている。熱い研究者を自身の周りに大勢集め、その人たちの熱を中高生研究者に伝える取り組みを行ってきた。現在は研究キャリアセンター長を務める。

「サイエンス」とは何か

佐野:「サイエンスキャッスル」って名称ですが、そもそもサイエンスって何ですか?

前田:未知なる現象について、体系立てて世界共通の手法・言葉をもって解明すること・・・研究の観点も含まれますが、こんな感じでしょうか。

西山:難しい問いですよね。学問でもあり、ものの考え方でもある。「この世界をどう捉えるか」みたいな。

立花:人間とは対極に存在する真理とでも言いますか。

前田:そもそも、サイエンスって、人間が作り出した産物かもしれませんよね。人間以外の周りのものに対する興味が作り出したもの・・・。

佐野:予想以上にハイレベルな回答ですね(汗)。研究とは、そんな理解し難い事象を日々追求するってことなのでしょうか?

研究の定義を考える

立花:「研究する」ことが特別なような印象がありますが、そもそも、研究の定義って難しいですよね。たとえば、幼児が石を投たり机から落としたりして、その様子をじっと見ていることがあります。小さな子供にしてみれば、それも研究みたいなものかもしれないですよね。

西山:そう考えると、研究って本能的なものなのかもしれないですよね。立花さんが言う子供の活動は、「因果を学んでいる」という説もあるみたいです。因果関係を知ることが楽しいというのは、人間の本能なのかもしれませんよね。

立花:そういう意味では、誰だって研究者と言えるかもしれません。例えば、町工場でより良いものをつくろうとしている職人さんも、見方を変えれば研究者ではないでしょうか。日々、みんな研究をしているわけです。

佐野:なるほど。いわゆる学術研究というのはごくわずかで、それ以外の研究もたくさんあるということですね。

前田:そうですね。ただ、サイエンスキャッスルに参加する皆さんの研究は、学術研究に近いとも言えますので、世界共通の手法や言葉を使うという意味でも、それなりのルールや作法を守って取り組むことが求められると思います。

学術研究の価値とは何か

佐野:学術研究にはどんな価値があるのでしょうか?

前田:未だ分からない事象に対して、数字や図に表したりしながら人類の知を広げる活動が研究であって、高尚で本当に価値がある行為だと思います。

西山:例えば、ひとつのテーマに取り組む個人には、研究が好きだからとか、役に立ちたい、金持ちになりたいなど、個々のモチベーションがあるかと思います。私なんかは、単純に「楽しい」から研究をやっているんですけどね。仮説を立てて動くのも楽しい。発見するまでのプロセスも楽しい。
一方で、個々に興味をもつことが違いますから、研究テーマは自ずと多様化します。実は、社会においては、多様な研究が行われていることが重要なのかもしれません。

佐野:つまり、色々な研究がされていること自体に価値があるということですか?

西山:逆に、世界中の皆が同じ方向を向いて活動をしていたら、それ以外の知識は増えませんよね。時代が過ぎれば、その価値はなくなってしまうかもしれません。生物の進化と同じで、多様なものがあることで、時代が変わり続けても新たな知識と価値を生み続けることができるわけです。

多様な研究テーマが融合するために

立花:サイエンスキャッスルでも、色々な分野の研究が発表されますよね。

前田:確かに、サイエンスキャッスルには「発表の場」があります。ただ、まだ物足りなさがありますけど。

佐野:ずばり、サイエンスキャッスルに足りないものってなんでしょう?

前田:サイエンスキャッスルでは、様々な研究が発表されます。ただ、そこから得られた知識が融合して新しい価値が生まれるまでには至っていません。つまり、サイエンスキャッスルをきっかけに、中高生研究者同士が連携して新たな仮説やテーマに取り組むといった例は、まだ少ないということです。

佐野:なるほど。でもここまでの話を聞いていると、研究自体も簡単ではないように思いますし、他の研究者を巻き込むのも勇気がいるような気がします。

西山:確かに、見ず知らずの研究者に声を掛けるのは勇気がいるかもしれません。ただ、自分の研究について、成果だけでなく、そのテーマにたどり着いた経緯やこの研究計画に至ったプロセスなどを共有し合うことは、とても学びがあります。なぜこう考えたのか、どうしてこれを発案したのか。まずはディスカッションから始めるのがいいかもしれませんね。

研究発表の本当の意義

佐野:サイエンスキャッスルという研究発表の場は、対面でのディスカッションが可能ですが、一方で論文という研究発表の仕方もありますよね?

西山:はい。貴重な発見を論文として発表し、世界に伝えて後世代に残すことは確かに意味のあることかもしれませんね。ただ、逆にジャーナルに載ることだけが重要ではないとも思います。「論文」という仕組みも人がつくったものですし、時代にあっているかという疑問もあります。この論文という仕組みが、基本的に「最初に発表する人が偉い」という価値観を生んでいる可能性だってあります。そうすると、劇的な発見があるまで、研究の内容を明かさない方が優位性を保てるわけですから、研究はどんどんと閉鎖的になっていくわけです。
もちろん、それがダメというわけではないですが、すべての研究でそれが正しいとも言えませんよね。
たとえば、課題解決を目的にした研究であるならば、自分一人の成果にしたいなどと拘らず、みんなでテーマと情報を共有しながら取り組んだ方が、遥かに価値があるかもしれませんね。

中高生研究者だからできる研究価値のパラダイムシフト

立花:課題といえば、日本よりアジアやインド、アフリカなど海外の方が、課題が多いような気がします

前田:特に課題解決という観点では、研究情報をオープンにしていくという考え方は有効に思えますし、私もそうしていきたいと願っています。ただ、利権が絡む人たちには受け入れ難いかもしれませんね。
一方で、世界中にある課題の多くが、その要因も複雑化して解決がより難しくなってきています。一人の力では叶わない。たくさんの仲間が集まり、知恵を持ち寄って解決を目指す必要があるでしょう。今や、社会におけるサイエンスと研究の在り方そのものを、開発していく必要があるのかもしれません。

佐野:海外の人たちとチームをつくって研究を進めようとした場合、言語の壁が気になってしまうのですが。

前田:研究者にとってサイエンスを追求しようとする共通した目的は、中高生であったとしても、チームを作るのに十分なきっかけになると思います。たとえば、シンガポール大会に参加した日本の高校生研究者の話ですが、自身の研究を知って欲しいし、意見や反応が欲しいから、英語が上手でなくても一生懸命伝えようとするわけです。シンガポールの高校生や研究者も、どんな研究をしているのか興味があるから、なんとか話を聞き出し理解しようとする。言語や文化の壁などは、意外と関係ないものです。今や、通信や翻訳技術が発達して容易に海外の人たちとコミュニケーションできるようになりましたしね。

西山:研究は、もちろん、経済活動とのつながりを無視できないでしょう。でも、利権に縛られていては、研究の価値を発揮できない時代になっているとも言えます。こうした既定概念に縛られない中高生研究者こそが、サイエンスと研究の新たな在り方を追求できると思います。
そして、サイエンスキャッスルこそが、その価値観を変えていくことができる場となるはずです。

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