ホーム someone 【someone vol.36】【生き物図鑑 from ラボ】オスが子育てする魚 タツノオトシゴ

【someone vol.36】【生き物図鑑 from ラボ】オスが子育てする魚 タツノオトシゴ

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 中国語では「海馬」という名をもつ通り,馬のような顔をした魚類,タツノオトシゴ。じつは彼ら,とても優しさにあふれた子育てをするのです。タツノオトシゴは,お腹にポコッと突き出た,「育児嚢(いくじのう)」と呼ばれる,子育て用のフカフカの袋をもっています。この育児嚢を持つのは,じつはオスの方。育児嚢の中にメスが卵を産みつけ,稚魚が1 〜 2 mm 程の大きさから1 cm 程に成長するまでオスが大切に育てます。稚魚が巣立つとき,オスは一生懸命にイキんで,ポコンと「出産」します。その姿は人間さながら。「思わず,そばで応援しちゃう」と上智大学の川口眞理さんは言います。この「パパの手厚い子育て」のおかげで,マンボウなど子育てをしない魚と比べると,稚魚の生存率は約10万倍にもなるのです。
 このめずらしい育児方法がいかに進化してきたのかが知りたくて,川口さんは研究を進めてきました。タツノオトシゴの近縁種には,お腹に卵をただ付着させて育てるシードラゴンや,ぺらんとした表皮で卵にフタをするだけのヨウジウオなど,似た育児法をとる魚がいますが,その中でも育児嚢という袋を使うタツノオトシゴの子育ては群を抜いて「安全」です。川口さんは,シードラゴン型の育児法からヨウジウオ型,そしてタツノオトシゴ型へと,何万年もかけて進化していったのではと考え,彼らの遺伝子を調べています。最新の遺伝子の研究では,育児嚢を持つタツノオトシゴの卵の膜は他の魚よりも薄く,稚魚は卵膜を溶かす酵素の一部を使わずに孵化できることがわかってきました。育児嚢に合わせて,稚魚も進化していたのです。タツノオトシゴがどのような進化を経て,パパによる愛情たっぷりの子育て法を獲得してきたのか,解明される日も近いかもしれませんね。(文・土井 寛之)

取材協力:上智大学 理工学部 物質生命理工学科 川口 眞理さん

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