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【特集】① ASIAN TRANSFORMATION >> the Philippines
2021.07.08日本から飛行機に乗って5時間ほど南南西に向かうと、そこはフィリピン共和国(通称:フィリピン)だ。
7000以上の島をもつ島国で、国土は日本の約8割、人口は約1億98万人と、日本人には何となく親近感を感じさせる国だろう。
実際に多くの人たちが日本で働き、大学や研究機関では研究目的の留学生も大勢見かける。
多くの若者が、母国を離れて海外に活躍の場を求めているのだ。
しかし、この現象は一方で、大勢の有望な若者たちが母国から流出していることを意味する。
急速な人口増加と目覚ましい経済発展を遂げているフィリピンは今、多くの課題とともに、時代の節目を迎えている。
課題大国
フィリピンの課題は非常に多い。優秀な人材の国外流出、急速な経済発展によるゴミ問題を筆頭とした環境問題、生活水準が向上する一方で露呈する貧困問題などその課題は多様で困難だ。このような環境にあって、フィリピンでは起業活動が盛んである。もっとも、フィリピンには大手企業が少なく雇用機会にも限りがあるため、生活のために必然的に起業することも多いが、課題が多いという点においては、「合わせてチャンスも多い」という考え方もできるかもしれない。
新理解の「アントレプレナー」を育てる
アントレプレナーとは、一般的には起業家や事業を起こす人のことを指す。そう考えると、フィリピンにはアントレプレナーが非常に多いというのは頷ける。しかし、重要なことは起業の“目的”ではないだろうか。フィリピンの現在の産業構造を見ると、コールセンターなどのサービス業が6割で、残りは3割が鉱工業、1割が農業という状況だ。
つまり、従来の産業の上に、新たにITなどを活用し、外資企業を相手にしたビジネスが盛んであり、自国には、科学技術をもとにした製薬やものづくりなどの産業はほとんどないのが現状だ。科学技術による産業はどの国にとっても非常に重要である。多くの雇用を生んで国力となるだけでなく、技術による自国の課題解決にもつながるかもしれない。
科学技術を理解し、多くの課題を認知し、そのうえで社会に新たな価値を生み出していこうとするアントレプレナーを今、フィリピンでは育てようとしている。
日本にお いても多くの大学や私立高校で始まっている「アントレプレナーシャプ教育」や「グローバル教育」。その目指すべき人材像は具体化し難い。しかし、そのヒントが今大きく変貌を遂げつつあるフィリピンにあるかもしれない。
今回は、フィリピンの科学技術省科学教育研究所のジョゼット・ビヨ博士と、フィリピンの課題に挑むスタートアップ企業のロリリーン・ダキオアグさんに話を伺い、フィリピンにおけるアントレプレナーのあり方と育成の実態を探った。
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