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リバネス × 未来の教室「オンラインフォーラム実施レポート」
2020.10.03令和2年2月29日、COVID-19感染拡大を防ぐため、翌月3月から全国の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校へ休校の措置が取られました。突然の休校措置を受け、物理的に集まらない形の新しい学びの模索が一斉にスタートしました。その中で、先陣を切って、既存の授業の形態にとらわれず、試行錯誤して授業を行っている先生方の取り組みを発信したい、この思いからリバネス教育総合研究センターでは6月24日(水)にオンラインフォーラムを実施しました。フォーラム当日は、全国各地から聴講者が集まりました。その数は総勢200名。さまざまな教科をご担当の小学校から高校の先生、教育関係の企業の方々など、教育に関わるたくさんの人たちへ向けて実施したフォーラムの内容、そしてそれを聴講していた方々から集まってきた声をまとめました。
未来に備えるため、学びの原点へ立ち戻る
これから社会がどのように変化していくか、VUCAの時代と呼ばれるなど、未来は誰にもわかりません。そのような予測しきれない未来へ向かって、これから大学や社会へ進む準備をしている中高生が、どんな経験や学びを体得することが必要なのでしょうか。フォーラム冒頭のキーノートスピーチで、経済産業省『未来の教室事業』の発起人である浅野氏がひとつの答えを投じました。「例えば災害時に現地避難所に救援に行った時、避難者の健康を守るためには居住環境をどう設計し直すか、どんな暖房器具や必要な電源を用意すれば良いか。必要だったのは、とにかく「科学」の視点をもって、必要な情報をネットから集めて専門家と話して動いてみることだった」と振り返りました。目の前の問いに立ち向かっていく。そのプロセスで、知識や経験を獲得していく、これこそが学びの原点であり、そのプロセスを通すことで、生徒一人ひとりに必要な経験や学びを体得していくことができるのではないでしょうか。
使えるものは何でも使って、学びを止めない
そしてまさに「必要だから学ぶ」という経験を、日本全国で、生徒ではなくまずは先生が経験せざるを得なかったのが、新型コロナウィルス感染拡大に伴った一斉休校措置でした。生徒が登校することができない中、どうすれば良いのか。政府機関や教育委員会を始め、先生方一人ひとりが試行錯誤を試みたのです。そんな中、岡山県立玉野高等学校の藤田先生は、感染予防の必須アイテムとなっていた「マスク」を題材に、解決すべき問題を抽出し、それを解決するマスクを考え設計、試作する活動を行いました。また、聖学院中学校・高等学校の田中先生は、この機会に「問い」から始まる探究的な授業の設計に着手。陸上競技のバトンパスを題材にした授業では、先生が校庭で被験者となってバトンパスを行ってデータを取ったそうです。広尾学園中学校・高等学校の木村先生は、休校中にオンライン研究発表会を実施。グーグルスプレッドシートへは、ポスター発表の各部屋のURLを貼り付け、聴講者はそこにアクセスし発表を聞きました。オンライン実施に関して、生徒の中では得意な生徒もたくさんいるので、生徒にイベント告知や視聴リンクの手配など、手伝ってもらいながら進めました。じっとしているのではなく、「その状況下でできることをまずはやってみる」ことが大切なのです。
「生徒が自分で学んでいく」を体現
東京都立農芸高校の河野先生は、フォーラムで株式会社サイエンスグルーヴが開発したバーチャル生態系ソフトを使って授業を行った経験を紹介しました。ゲーミフィケーションを利用したこのソフトは、何十年という時間軸で移り変わる植生の遷移が数分の単位で体験できます。授業の中で実際に生徒が体験したとき、河野先生が一番驚かされたことは、問いから始まり検証する研究活動が、教員の指示がなくとも、自然と起こっていたことでした。「いつもは授業の中で、現象を説明し、仮説を立て、実験を考えさせて、と教員が先導して行っていたステップを、生徒自身が自主的に行っていたことが印象的でした」と河野先生は振り返っていました。タブレット端末の中で繰り広げられる植物の移り変わりでは、好きな場所を選んで種を撒いたり、伐採したりを簡単な操作で行うことができます。「こうするとどうなるんだろう?」と問いを立て、自分で試してみるきっかけをつくったことで、生徒が体験しながら学んでいくプロセスを作り出したと言えるのでしょう。
生徒と共に先生も成長する
今回のフォーラムでは、休校中に生まれた新しい取り組みに焦点を当てましたが、それらの効果検証も大切です。オンライン授業の良い活用方法とは、オフラインの活動とどう組み合わせることが良いのか、また、探究活動そのものの評価方法については、様々な試みはあるものの未だ課題が残っています。ただ、浅野氏が体験した避難所での経験が象徴するように、誰も決まった答えを持っていないときに、生徒と先生が一緒になって学んでいくことが探究活動であり、必要から生まれる気づきや学びが生まれるプロセスがそこにあることも事実だと考えます。 生徒も先生も手探りだからこそ、生徒と一緒に先生も成長していくもの。フォーラムの終盤、先生の働き方改革を進める株式会社ARROWS 浅谷氏から「先生は、これからもっとクリエイティブなことに時間をかけて欲しいと思います」とメッセージが送られました。「ピンチなときに、良い意味でワクワクして自分から動いていける人材をもっと増やしていきたい」そう私たちは改めて願いフォーラムを終えました。 終わりに、事後アンケートからの一声を紹介します。「授業は生徒と一緒に作っていくのが面白い、ということに共感しました」。手探りでも良いんです。今こそ、先生のワクワクの赴くままに動き続けましょう。
先生の声一覧
- 当初、オンライン授業は普段の授業の代替案としてしか思っていませんでした。
しかし、登壇者の方々がオンラインだからこそできることを考え、実践をされていたことが印象に残りました。 - ARROWSの浅谷氏の教員の働き方改革への考え方に感銘を受けました。
自分自身も「忙しいのは仕方がない」とある意味諦めていましたが、工夫次第で変わっていくことができると改めて感じました。 - 一人ひとりのワクワクポイントは異なりますし、自分のスイッチがどこにあるのかを知るためにも、沢山の経験の場が必要だと感じました。
これは、大人になってからも同じです。大人もワクワクする学びをいかに作るか、これからの課題だと思っています。ありがとうございました。 - 「授業は生徒と一緒に作っていくのが一番面白い」ということに共感し、一番印象に残っています。
- 古き良き日本の文化・伝統と新たな価値を創出するクリエイティブな教育活動の溝を埋めることが今後の課題であると思います。
これを実現するために、パネルディスカッションで挙がった「いらないものを削る」の「いらないもの」とは何か?について、選定していくことが重要であると感じました。
※『教育応援 vol.47』から転載