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課題研究の相談窓口通信(2016年2月16日号)「いらないもの」を「価値あるもの」へ ー微生物発酵で創るエネルギーー

2017.02.16
課題研究の相談窓口通信(2016年2月16日号)「いらないもの」を「価値あるもの」へ ー微生物発酵で創るエネルギーー

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みなさんご飯は残さずに食べていますか?国内の飲食店から出る食品廃棄物量は、一日5000tを超えると言われています。一部は飼料や堆肥化されるもの、残りは「要らないもの」として焼却処分されています。古崎先生は、微生物を使い「要らないもの」からエネルギーを作り出す研究に挑戦しています。
※ 平成24年度の推定値、農林水産省 平成26年度食品産業リサイクル状況等調査委託事業(食品廃棄物等の可食部・不可食部の量の把握調査)より

生ゴミのポテンシャル

微生物の環境浄化能力に魅了された先生は、「微生物を使って役立つことをしたい」という思いで、大学の食堂から出る生ゴミ・残飯などからエネルギーを作り出すことにしました。生ゴミを扱う上で難しい点は、日により成分が一定では無いことです。そこでまず食堂から出る生ゴミの種類と比率を調査し、その結果、特に炭水化物類が多いことを明らかにしました。炭水化物はグルコース(C6H12O6)が結合して出来ており、バイオマス発電ではこのグルコースを分解して生成される「エタノール」や「メタンガス」が鍵をにぎります。

 

次々と立ちはだかる課題

処理はまず、生ゴミを脱水・粉砕した後、炭水化物中のグルコースを切り出し、微生物の餌にしやすくするために必要な糖化処理を行います。その後、酵母菌を与えるとエタノールが、嫌気性細菌を与えるとメタンが生成されます。得られるエネルギー想定量が多くないことから、この処理に通常のゴミ回収のような輸送エネルギーを使うことは考えられません。そこで先生は飲食店に設置可能な装置の開発を目的としました。

しかし改良を続けても、エタノール発酵では、装置を大きくしないと十分なエネルギーの回収ができません。また、メタン発酵では20日間も時間がかかり、かつ得られるガスには50%も二酸化炭素が含まれると、それぞれ問題を抱えるばかりでした。

 

2つ合わせて課題解決

それぞれの実験について限界が見え始め諦めかけていた時、「エタノール発酵とメタン発酵を組み合わせることで発酵時間が短縮するのでは?」というアイデアが浮かびました。グルコース(C6H12O6)は、Cが6つ結合しています。エタノール(C2H5OH)は2つ、そしてメタン(CH4)には、1つしかありません。グルコースをメタン発酵すると、いきなりC結合をたくさん切る必要があり時間がかかります。そこで、一度エタノール発酵させ、余分なCO2を除去し、その後メタン化させてみました。これにより、濃度の高いメタンガスを短期間で発生させることができ、課題を一気に解決する発見につながりました。

 

失敗しても止まらずに、自分目線でやってみよう

ゴミ問題やエネルギー問題は世界中で関心が高まっており、先生の構想では製品化まであと10年。同時にこれまでを振り返り、「10年やって、ようやく成功しました。失敗ばかりでしたが、諦めず行動することで結果が出る。失敗しても行動することで次のステップは明確になる。」と語ります。失敗しても楽しい、知りたいと思えるテーマを見つけ、価値が生まれる瞬間を求めて研究を続けます。

大阪工業大学 工学部 環境工学科 古崎康哲 准教授大阪工業大学大学院工学研究科を修了(工学博士)卒業後、上下水道の設計コンサルタント会社に就職。子会社(ネパール国)への技術指導、産学連携の共同研究、上下水道地理情報システム(GIS)、上水道基本計画などを行い約7年間勤務。その後大学恩師が設立したベンチャー企業の立ち上げに参画し、排水処理用薬剤の製造・販売を行う。2007年から大阪工業大学講師、2011年から現職。

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