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課題研究の相談窓口通信(2016年2月23日号)人間の脳を理解した先にある、ロボットと人間の共生可能な社会
2017.02.23<PDFファイルのダウンロードはこちらから>
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課題研究の相談窓口通信vol5 中山先生 (5325 ダウンロード)
人間の脳と比べて10倍もの処理速度を持つコンピュータを使って、人を超える運動能力をもったロボットが開発されても不思議ではありません。しかし、その動きはどこかぎこちないという不思議。中山先生は、ものづくりを通して「脳」と「身体」の不思議に迫っています。
物理学最後のフロンティア
コンピュータが生まれた頃、処理や記憶といった人間でいうところの「脳」の仕組みをどう実現するかという研究が始まりました。数学と物理を基盤としながら情報理論などを突き詰める計数工学の分野で研究していた先生は、脳を探るうちに、本質を理解するためには、「理論をもとに形を作り、狙った動きがきちんと再現できるかを調べる必要がある」と考えるようになりました。「実証しないことには、正しいと言えない」、そう語る先生はものづくりの視点で、物理学最後のフロンティア「脳」に挑み始めました。
脳の計算に、まさかの「遅れ」!?
運動の基本的な神経反応は、筋肉に引っ張る力をかけた時,その筋肉自身が収縮しようとする伸張反射です。膝の下を叩くとすねがあがる現象を体験したことがあると思いますが、まさに叩かれたことで一部の筋肉が引っ張られた結果です。こうした反射は一瞬のうちに起こるように思えますが、実際には30ミリ秒、さらに脳を経由することで100ミリ秒もかかります。先生独自の着眼点は、この「遅れ」。ロボットのコンピュータ制御では通常この処理をわずか1ミリ秒という短い時間で行いますが、速すぎる処理は逆にぎこちない動きを生んでしまうことがあります。遅れをあえて導入し、脳の一部である「小脳」、でうまくコントロールすることで,私たちのスムーズな動きは実現されているのです。
数式を作り、モデルを作り、実証する
先生は、さっそく小脳の働きをモデル化し、それをコンピュータ制御により実証することを始めました。何か現象があった時に、それを引き金にどんな信号が送られるか、処理はどんな方程式に従い、どんな信号を送り返すか。こうした仮説とその実証を繰り返し、小脳の働きでは「運動の予測」が鍵となり、遅れがあっても先の動きを予測して制御し、結果的に滑らかな動きが生まれていることを実証しました。
実際にこの方法を利用して開発したドア開けロボットは、人間のようなスムーズな動きを再現することに成功しました。ただし、状況によって滑らかな動きが再現できないこともあり、まだまだ人間の脳と身体の連携を理解するには時間がかかりそうです。
脳の働きを理解した先にある未来
「大学院から15年間、この研究をしてきていますが、まだまだ分かっていないことばかりです」と先生。しかし、この分からないことに対して自分の仮説をぶつけてそれが的中したとき、そこで生じる達成感が先生を突き動かしています。「人間の脳と身体の働きを再構成し、人間について理解を深めていくことで、社会に役立つものを創り出す」という先生の挑戦は、これからも続いていきます。
大阪工業大学 工学部 ロボット工学科 中山 学之 准教授2000年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得後退学、同年理化学研究所バイオミメティックコントロール研究センター研究員、2006年より名古屋工業大学大学院工学研究科おもひ領域助教,特任准教授,特任教授を歴任、2016年より現職(博士(工学))。2017年4月、大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科に移籍予定。 |
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