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オジギソウの美しい魅力を研究で解明したい!小松さんの挑戦【サイエンスキャッスル2023関東大会ダイジェスト】

2024.05.30
オジギソウの美しい魅力を研究で解明したい!小松さんの挑戦【サイエンスキャッスル2023関東大会ダイジェスト】

次世代研究者達が躍動する中高生のための学会「サイエンスキャッスル」の様子や、現場の熱気をダイジェストでお届けします。今回は、サイエンスキャッスル2023関東大会の口頭発表演題にて日本ハム賞を受賞した、小松 和滉さん(長野県諏訪清陵高等学校附属中学校3年)の発表の様子です!

※所属・学年は発表当時のもの

オジギソウの神秘に魅せられて

みなさんこんにちは。長野県から来ました、小松和滉です。私は、深層学習を用いて「オジギソウの開閉状況を定量化する技術」を開発し、オジギソウ固有の特徴である就眠運動の解明を行いました。

まずはじめに研究動機、私のパッションの源を紹介します。こちらの動画をご覧ください(会場で動画が流れる)。これはオジギソウが光に反応して葉を開いている様子です。力強く、かっこよく、美しく運動しています。私はそんなオジギソウに魅せられ、「神秘を解き明かしたい!さあ研究だ!」と思い、研究を行なってきました。

 

 

オジギソウの就眠運動とは、昼間に葉を開き、夜間に葉を閉じる運動のことで、覚醒物質と就眠物質という2つの物質の周期的な増減によって制御されています。つまり、葉の開いている昼間には覚醒物質が多く、葉の閉じている夜間には、就眠物質が多いということです。

 

世界で自分だけ!オジギソウが24時間観測可能に

研究におけるこだわりポイントは3つ。まずは1つ目、実験環境を屋内に整備したことにより、条件を完全に制御できるようになり、定量的な実験が可能になりました。2つ目は、オジギソウの葉を切断して、水の上に浮かべる実験方法を採用したことです。皆さん、「水の上に浮かんだ状態で、オジギソウって本当に就眠運動するの?」と疑問に感じたと思います。オジギソウは、水の上に浮かべられても開閉運動を行います。このことから、複雑な条件制御を可能にするため、本研究ではこのような実験方法を採用しました。

こだわりポイントの3つ目は、モデルの構築と実装です。これは、オジギソウの開き具合をどう評価するかという、本研究において非常に大切な部分です。実は昨年度まで、葉の開き具合を「大体170度位なんじゃない?」と目視で判断していたのです。しかし、全ての葉に対して行うには、とても労力が大きい上、全くもって科学的じゃないですよね。そこで私は今年度、「24時間オジギソウの開閉状況を定量化するツール」を開発したのです。

技術の流れとしては、まず初めに24時間自動で写真を撮影、写真の中のオジギソウの葉を検出し、開き具合を数値化します。自動で写真を撮影することに関しては、こちらのカメラで、5分に1回写真を撮影します。葉を検出する技術に関しては、Yolov8というモデルを活用し、物体検出の手法でオジギソウの葉を検出しました。

 

 

最後に、開き具合を数値化する技術については、既存のニューラルネットワークの一部をオジギソウに合わせて学習させることで、オジギソウの画像を与えた時に、開き具合を算出してくれるモデルを構築しました。このようにして、私はオジギソウの開き具合を24時間定量化できる技術を開発しました。
これまで先行研究でも、オジギソウの開き具合は目視で判断されていました。そのため、開閉状況を24時間ずっと見続けられるのは世界で私だけということで、すごく誇りに思っています。

 

オジギソウは光が当たり始めるよりも前に葉を開く!

ここから結果となります。まず初めに屋内で植物育成ライトによって明暗周期12時間で育てたオジギソウに、同様に明暗周期12時間で光を当てた時の結果です。グラフの縦軸が開閉度、横軸は時間軸です。データを見ると、面白い結果が2つあります。まず1つ目は、「オジギソウは光が当たり始めるよりも前に葉を開く」ということ。オジギソウは光が当たるタイミングを学習して、より効率良く光合成を行うために葉の開閉運動を事前に行なっているということがわかりました。2つ目は、開き具合のタイミングが2つある個体があることから、「オジギソウの覚醒物質はピークを2つ持って増減しているのではないか」ということです。これにより、光が強く当たる時間は葉の開きは小さくなり、強い日光から葉緑体を保護することができます。

 

 

続いて、屋外で自然光によって育てたオジギソウに、先ほどと同じような条件で光を当てて実験を行いました。すると、全くもって反応が見られなかったのです。この反応の差異はどこで、どのような条件が影響して起こったのでしょうか?それは屋内と屋外の条件をまとめてみることで分かってきました。光の強さに大きな違いがあったのです。このことから、オジギソウは光の強さに合わせて活性物質の放出量を増減させており、屋外の強い光に合わせて活性物質を放出していたオジギソウは、屋内の弱い光では反応できなかったものと考えられます。

 

実験から見えてきた!オジギソウの就眠運動のヒント

最後に、明暗周期の実験です。屋内でオジギソウを明暗周期12時間にて育てたものを活用し、さまざまな明暗周期で光を当てて実験を行いました。仮説として「光の長さにかかわらず、12時間葉が開くのではないか」という仮説のもと実験を行いましたが、基本的には光が当たっている時間のみ葉を開くことが分かりました。全く光を当てていない個体はわずかに反応しているのですが、基本的には光が当たっている時間のみ葉を開いています。

 

 

実は、ポットのオジギソウは、明暗周期や、光の当たっている時間に関わらず12時間葉が開き続けます。では、この反応の差はどうして生まれたのか。葉の表面にあるイオンチャネルや、オジギソウの切断面から覚醒物質が多く水中に放出されたことで、絶対量が減少してしまったためだと考えています。また、光が当たらなくても反応する条件があること、光が当たっている時間だけ葉が開くことから、オジギソウの活性物質は、「光に反応した放出」と「周期的な放出」、二つの放出方法があるのではないかと考えています。

 

 

今後の展望として、実は今年度、オジギソウの活性物質を葉の中から抽出することを試みたのですが、成功しませんでした。そこで来年は、この実験を続けていくとともに、オジギソウの活性物質を有機合成して取り出し、就眠運動の解明につなげていきたいと考えています。

審査員からの質問

森下 直樹(日本ハム株式会社)
非常に面白い発表をありがとうございました。定量モデルを作られたということでお聞きしたいのですが。葉っぱが重なっているものをうまく検知する技術というのは、かなり難しいんじゃないかなと思います。我々も実は同じようなことを豚を対象に行なっているが、豚も(オジギソウのように)重なっていたりする。この辺りの工夫を教えてもらえますか。

 

小松 和滉:
初めはポットの状態で実験しようと思っていましたが、おっしゃる通り定量化が非常に難しく、水の上に浮かべて重ならないようにして実験することにより、葉の検出を可能にしました。来年度からは重なっている状態のオジギソウの葉をどうにか検出できるようにし、ポットのオジギソウも定量化できればと考えています。

 

西山 哲史(株式会社リバネス):
楽しい発表をありがとうございました。最後の実験についてお聞きしたいんですけれども、特に気になったのが、明るく全くしなくても反応しているというところ。「オジギソウがどうやって時間を覚えたのか」と気になりました。全体状況を確認したいのですが、葉の開閉は何回も繰り返されるのですか?12時間の周期で、12時間経てばまた開きますか?この実験をする以前の条件もお聞きしたいです。

 

小松 和滉
光の条件に関しては、基本的には明暗周期12時間で光を当てて、活性物質を増減させています。そのため、周期的な活性物質の増減が発生するため、光が当たっていなくても反応しているのかなと思います。この反応がずっと繰り返すのかということについては、この条件であれば、2日目3日目と同じように反応がみられます。

 

西山 哲史(株式会社リバネス):
(オジギソウは)周期を覚えているんですか?

 

小松 和滉:
オジギソウは、より効率良く光合成を行うために、活性物質を放出させる周期を作っているのかと思うんです。活性物質を放出するタイミングを覚えているというか。

 

西山 哲史(株式会社リバネス):
ぜひ次の実験で、15時間など他の周期を覚えさせてみてください。

 

小松 和滉:
実は、ポッドの状態で24時間光を当てたことがあって。その時はオジギソウが全く周期運動しなくなりました。人為的に光を当てる長さを変えることで就眠運動の長さを調整できるのかなと思っているのですが、ぜひ来年以降やってみたいと思います。

(※敬称略)