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うちの子紹介します(55):一途な海鳥オキノタユウ

2021.07.01
うちの子紹介します(55):一途な海鳥オキノタユウ

[vc_row][vc_column][vc_column_text css=".vc_custom_1625210425378{background-color: #f2f2f2 !important;}"]研究者が,研究対象として扱っている生きものを紹介します。毎日向き合っているからこそ知っている,その生きもののおもしろさや魅力をつづっていきます。[/vc_column_text][vc_empty_space][vc_separator][vc_empty_space][/vc_column][/vc_row][vc_row][vc_column width="1/3"][/vc_column][vc_column width="1/3"][vc_single_image image="12034" img_size="600x430" add_caption="yes" alignment="center"][vc_single_image image="12035" img_size="600x430" add_caption="yes" alignment="center"][/vc_column][vc_column width="1/3"][/vc_column][/vc_row][vc_row][vc_column][vc_column_text]翼を広げると2.3 m,体重は5~6 kgにもなり,最大で70歳近くまで生きる長寿な海鳥,オキノタユウ。細長い翼をグライダーのように広げて海上に吹く風の力をうまく使い,ほとんど羽ばたかずに高速で飛行します。しかし,陸ではその体型から走るのが遅く,飛び立つときには長い助走が必要のため,簡単に捕獲され「アホウドリ」という名前がついたほど。また,軽くて保温性に優れている羽毛を持つことから,乱獲されて絶滅の危機に陥ってしまったのです。

オキノタユウは夏の間は北太平洋北部で過ごし,10月頃になると伊豆諸島の鳥島や尖閣諸島に戻って繁殖を開始します。夏の間,広大な海で別々に過ごしていたつがいは,繁殖地で再会しお互いを確認,つがいの絆は固く,相手が死亡するまで保たれるといいます。平均して7歳から繁殖を始めて,毎年産卵するのですが,1年に産む卵の数はたった1つ。その卵をつがいが交替しながら温めて育てます。食べ物を探して相手が一週間以上,海上を飛び回っている間は,自分は飲まず食わず,相手が戻ってくることをかたくなに信じながら卵を抱き続けます。このような信頼関係で結ばれる相手と出会う過程には,首を振りながら嘴(くちばし)をカタカタ鳴らすといった求愛のダンスがあり,そのリズムが一番合う者同士で結ばれるといいます。

一時は2桁のおよそ50羽にまで減ってしまった時期もありましたが,動物生態学者である東邦大学の長谷川博さんの42年間もの地道な監視調査や繁殖地の改善の結果,現在はつがい数1000組以上,総数5000羽以上にまで戻ってきています。息の合ったダンスから始まる恋,そして毎年同じ相手と一緒になり,交替で2 ヶ月余り卵を温め,さらに4 ヶ月半もひなを保育するという愛おしさと辛抱強さを兼ね備えたオキノタユウ。これから研究がさらにすすむことで,また違った表情が見えてくるに違いありません。

取材協力:東邦大学 名誉教授 長谷川 博さん

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