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【実践!検証!サイエンス】納豆のネバネバ×ロボットのハイブリットで海洋での重油回収に挑む!

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ここでは,全国から集まった実践!検証!中の研究テーマについて,研究者からのアドバイスを添えて紹介します。

2020年7月のモーリシャス沖での貨物船座礁事故では,燃料の重油が海洋に漏れ出し,油による汚染が広がりました。濁りで汚染された水を浄化するには,水質浄化剤を使用して,汚染物を固めて取り除く方法があります。倉冨さん率いるロボットサイエンス部は,「現場ですぐ水質浄化剤と混ぜ,重油を固めて回収できるロボットがあれば被害を抑えられるのでは?」と考え,水の汚染物を取り除く回収ロボットの開発に取り組んでいます。

追手門学院大手前高等学校
代表者:倉冨 星衣(写真右から2番目)
共同研究者:伊藤 悠之助,帖佐 遥夢,惠川 陽都
追手門学院大手前高等学校 代表者:倉冨 星衣(写真右から2番目) 共同研究者:伊藤 悠之助,帖佐 遥夢,惠川 陽都

(本研究はサイエンスキャッスル2020 関西大会で立命館大学賞を受賞しました)

実験1 ポリグルタミン酸による食用油の回収実験

水面に浮遊した油を,水質浄化剤で回収する方法を実験しました。家庭で簡単に手に入り,後処理が簡単なごま油を重油に代わりに利用。また,浄化剤には「ポリグルタミン酸」という,納豆のネバネバ成分から作られた凝集剤を利用しました。水質浄化剤は,一般的に真水に利用されるので,海で使うことも想定し,海水と同じ濃度の食塩水でも実験を行いました。

実験材料・器材
· ごま油
· ポリグルタミン酸(日本ポリグル株式会社PGα21Ca)
· ペットボトル容器,ビーカー,ろうと,ろ紙

実験方法
① 水100mLまたは3%食塩水100mLと,ごま油10mLを混ぜた実験液110mLを調整する。
② ①の実験液とポリグルタミン酸1.0gをペットボトルに入れて,3分間激しく撹拌する。
③ ろ紙で,中の溶液を濾過(ろか)する


結果

水,食塩水のいずれの場合でも,水面に浮いていたごま油は,フワフワとした塊(フロック)となり,濾過によって除去された。(写真)

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▲ 実験で生成した、ポリグルタミン酸とごま油のフロック(写真左:水、写真右:食塩水)

Q どんなものが水質浄化剤(凝集剤)になるの?

一般的には,複数の正電荷をもつイオン(Al3+,Fe2+など)や,電離した官能基をもつ高分子が使われます。水の濁りなどは一般的に負電荷を帯びており,これを正電荷を帯びた凝集剤で引き寄せてフロックにすることで汚れを固めるのです。高分子の凝集剤は,フロック同士を絡めとり,さらに大きなフロックにすることで,凝集を促進します。

例)ポリ塩化アルミニウム(PAC),硫酸アルミニウム,塩化鉄(II) など

研究者からのアドバイス

みなさんの研究は環境問題を軸に,化学,機械,ロボットなど幅広い分野にわたっており,着眼点がとてもよいと思います。実際の油流出時にはゴミなども混じるため,そのゴミに付着した成分が含まれる状態で,どのように油成分のみを分離できるか,どのようなタイミングが回収に適しているかを調べておくと,回収装置に工夫すべき部分のヒントが得られるかもしれません。例えば,温度やポリグルタミン酸の量を変えながら時間とともに分離状態を観察し,データを蓄積するとよいと思います。また,同様な研究や回収方法を参考にすれば,より高効率で実用的な装置ができると思います。
提案する回収装置のミニモデルを作成して実験することにより,具体的な動きがわかり,見えなかった物理現象を得られることも多いので,それらの結果から実用化に向けて検討していくのもよいと思います。さらなる今後の成果に期待します。

今回の研究アドバイザー
立命館大学 理工学部 電気電子工学科 教授 川畑 良尚 さん
今回の研究アドバイザー 立命館大学 理工学部 電気電子工学科 教授 川畑 良尚 さん

実験2 油の回収率の評価

実験1で,ごま油をポリグルタミン酸によりフロックとして回収できることがわかりました。それでは何%回収できたのでしょうか?油が回収された分,元の溶液の色は薄くなるはずです。そこで次の実験では,元の溶液の濃さを測定することで,どれだけごま油が回収されたのかを測定しました。

実験材料・器材
· 色度計(HANNA Checker HI 727)

実験方法
実験1のポリグルタミン酸を入れる前の溶液と,入れた後の濾液の「色度」を測定して,比較する。

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今後の研究

今後は,より重油に近い油を用いて研究を進める予定です。同時に,事故海域周辺の船に装着して,その動力を利用してフロック化した重油を回収するロボットの開発を進めていきます。

▶ 船に装着して牽引することで水車を回し,その回転で水槽に重油混じりの海水を組み上げると同時に浄化剤を投入して攪拌します。フロック化した重油は,フィルターで濾過して回収する機構です。

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「someone(サムワン)」2021年春号 vol.54 より

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