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うちの子紹介します(51):地域で独自の進化を遂げた淡水魚カマツカ属

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研究者が,研究対象として扱っている生きものを紹介します。毎日向き合っているからこそ知っている,その生きもののおもしろさや魅力をつづっていきます。

川底の砂地の色にそっくりな体表のカマツカ(Pseudogobio esocinus)
川底の砂地の色にそっくりな体表のカマツカ(Pseudogobio esocinus)
ひげの長さの違いがカマツカと他の2種を区別する特徴の一つ!
ひげの長さの違いがカマツカと他の2種を区別する特徴の一つ!

川底の砂地に潜(ひそ)む,ちょっと臆病(おくびょう)なコイ科カマツカ亜科カマツカ属の淡水魚。釣り人にとっては比較的身近な存在であるカマツカ属は,広く岩手,山形以南の本州,四国,九州に生息します。これまで日本にカマツカ1種のみ生息するとされていたカマツカ属ですが,じつはこの中にナガレカマツカ,スナゴカマツカという2つの新種が隠れていたことが2019年4月に報告されました。
淡水魚は海水中では生きることができないため,海に出て別の河川へ移動することができません。そのため離れた場所にいる仲間との交流が少なくなり,長い時間をかけて姿かたちや遺伝子の性質が異なってくる「地域変異」が起きやすいことが知られています。カマツカ属が,いつ日本にやってきて,どのようにして3種に分かれたのか。全国でサンプリングした個体の遺伝子の違いを調べることで,ついにこのなぞが明らかになってきました。
中国大陸から最初に日本列島へやってきたカマツカ属は,今の本州中央部にそびえる中部山岳地帯が形成された結果,西日本にはナガレカマツカ,東日本にはスナゴカマツカという近縁な2種に分かれました。カマツカはその後の時代に新たに日本の西日本側にやってきた,いわば後輩です。それぞれの種をよ〜く観察すると,口ひげの長さや胸びれの形状,体表の模様に,カマツカ属3種の形態の違いが見てとれます。
一連の研究のはじまりは,関西学院高等部理科教諭の富永浩史さんが,高校生時代に感じた疑問。当時,富永さんが西日本の川で採取した数匹のカマツカの顔つきのわずかな違いをふしぎに思い,研究を続けたことが今回のカマツカ属に関する発見につながったのです。みなさんも身近な出来事に感じるわずかな疑問に,まずは一歩踏み込んで調べてみてはいかがでしょうか。新しい世界の見え方を手に入れることができるかもしれません。

(文・海浦 航平)

取材協力:関西学院高等部 理科教諭 富永 浩史さん

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