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うちの子紹介します(50):海岸沿いに生息した新種の恐竜カムイサウルス・ジャポニクス(むかわ竜)

2019.12.02
うちの子紹介します(50):海岸沿いに生息した新種の恐竜カムイサウルス・ジャポニクス(むかわ竜)

研究者が,研究対象として扱っている生きものを紹介します。毎日向き合っているからこそ知っている,その生きもののおもしろさや魅力をつづっていきます。

カ ムイサウルスの復元画
Ⓒむかわ町穂別博物館
カ ムイサウルスの復元画 Ⓒむかわ町穂別博物館
カムイサウルスの全身骨格
Ⓒ服部雅人
カムイサウルスの全身骨格 Ⓒ服部雅人

地球上の多くの生物が絶滅し,生態系が一新される前。約2億3千万年から6600万年前の地球上に我が物顔で生息していたのは大型の爬虫類,恐竜だったと考えられています。すでに絶滅した生物の姿を,わずかな情報から研究する古生物学の分野で,2013年ビッグニュースがありました。北海道むかわ町穂別で,恐竜全盛期の白亜紀の地層(約7200万年前)から大きな恐竜の化石が見つかったのです。
それから約6年後の2019年9月,「カムイサウルス・ジャポニクス」と名付けられたこの恐竜の化石は,ハドロサウルス科の新属新種の全身骨格であることが正式に認められました。この通称「むかわ竜」は,体長8メートル,体重4~5.3トンでトサカを持つ9歳以上の個体であると推定されます。どうやら彼らは海岸沿いに生息して,独自の進化を遂げたようです。「カムイサウルスは,海の底に堆積物がたまってできた海成層と呼ばれる地層から発見されました。これは重要な意味を持っています」と,今回の発表の中心となった北海道大学総合博物館の小林快次(よしつぐ)さんは話します。
約70種類のハドロサウルスの仲間について350種の骨の形を比較したところ,カムイサウルスがエドモントサウルスの仲間の恐竜で,海岸沿いの環境がハドロサウルス科の初期進化に重要であったことがわかってきました。イギリス,カナダ,アメリカをはじめ,恐竜の化石がよく発掘される地域の多くは陸地の地層です。「例えば,北海道はアンモナイトナイトの化石が多く発掘できることで知られています。日本には,海の地層がとても多いのです」と小林さん。カムイサウルスのように,恐竜の進化の過程や移動経路などを明らかにする重要な発見が,日本特有の海の地層から今後も見つかってくるかもしれないのです。
発掘された骨という非常に限られた手がかりから,情報を科学的に読み取り,その生き物の生態や生息時代をタイムマシンで見てきたかのように鮮やかに描き出す。その難しくも,興味深い研究手法が,古生物学の特徴です。皆さんの足元にも太古の生き物が生きた証拠が眠っているかもしれません。

(文・秋山 佳央)

取材協力:北海道大学総合博物館 教授 小林 快次さん