ホーム PROJECT MOTHER 無人探査機が魅せる、深海の真の景色を追い求めて

無人探査機が魅せる、深海の真の景色を追い求めて

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海洋研究開発機構
研究プラットフォーム運用開発部門
海洋ロボティクス開発実装グループ

技術主事 麻生 達也 さん

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▲ ギリシャで行われた「Shell Ocean Discovery XPRIZE」の決勝戦、AUVをモニタリングする部屋にて。中央後列、こちらを見ているのが麻生さん。(Team KUROSHIO提供)

金属バットをも押しつぶす「水圧」,10℃を下回る「水温」,一寸先すら見えない「暗闇」。海の底に広がるなぞに満ちた環境である深海は,人間が生身で向かうにはとても過酷な環境です。そんな「地球上の最後のフロンティア」を調査するため,人類は海中探査の技術開発を進めています。

まだ見えない海の底

地球表面の2/3を占める海は,平均水深が3800mにも及んでいます。この広大な環境のほとんどは未だに明らかになっておらず,海底の地形図は,地球から約38万km離れた月よりも明らかにできていません。しかし,調査の積み重ねにより,メタンハイドレートや,熱水鉱床,レアアース泥といった貴重な海底資源の発見。さらには,地震の予測,地球の成り立ちを解明するヒントなど,今まで見えていなかった新たな地球の一部が解明されつつあります。
この新たな一面を明らかにすることに貢献し,深海の新たな魅力を全世界に伝えた技術,それが水中探査機です。「海と地球」について研究を進めるJAMSTECは,水中探査機を活用することで,謎に包まれた世界を明らかにしようとしています。

深海に光を照らす水中探査機

現在JAMSTECでは,3種類の海中探査のプラットフォームを活用して調査を進めています。人が乗り込んで目的地まで操作し,調査をおこなう有人潜水調査船。母船からケーブルを介して遠隔で操作し,調査をおこなうROV(Remotely operated vehicle)と呼ばれる無人探査機。そして,コンピューター上に組み込まれたプログラムをもとに調査海域へ移動し,現場の状態に応じて自律的に調査する,AUV(Autonomous underwater vehicle)と呼ばれる無人探査機です。「深海はとても広く,人の手で調査を行っていては膨大な時間が必要になる。だからこそAUVのような新たな調査技術が必要です」。そう語るのは,最新鋭のAUVである「ゆめいるか」の開発を進める麻生達也さんです。
「ゆめいるか」は,後ろだけでなく前にも舵が搭載されており,機体を水平に保ちつつ斜面を航行することができます。これにより精度の高いデータを取得することが可能です。麻生さんは,海底地形データの精度をより良くするための機体運動の最適化を進めています。

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▲︎ 海底調査に向かう「ゆめいるか 」の様子(写真提供:SIP/JAMSTEC)

重要なのは一歩ずつの歩み

2015年12月,無人探査ロボットを活用し,制限時間24時間で東京ドーム1万個分の海底地形を調査することを目的とした国際コンペティション「Shell Ocean Discovery XPRIZE」の開催が発表されました。日本からはJAMSTECを含む8つの機関・企業が力を合わせ,「Team KUROSHIO」として参加しました。「ゆめいるか」などの今まで開発した水中探査機技術を統合し,開発されたAUVを活用した日本のチームは,超広域・超高速の海底探査を成功させ,見事世界2位の成績を残しました。
「これまでは,人が調査海域まで出掛けなければ,調査を進めることができませんでした。しかしこのXPRIZEでは岸壁からロボットたちだけで調査に出掛けるという新しい技術が誕生。まだまだ実績が少ないですが,いずれは日本の排他的経済水域を水中探査機が自動で調査してくれるシステムの開発につながっていくと思います」と語る麻生さん。いまだ多くの環境が調査されずに残る深海が,水中探査機開発の技術によって明らかになる日もそう遠くないかもしれません。

(文・小玉 悠然)

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