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これからの社会で本当に活躍できるAI人材とは?『「人間」を追求し、他人のためを考えられる人材への期待』

2021.09.02
これからの社会で本当に活躍できるAI人材とは?『「人間」を追求し、他人のためを考えられる人材への期待』

連載2
これからの社会で本当に活躍できるAI人材とは
AI技術が生活の中に実装される未来の社会において必要とされるAI人材とは、どのようなマインドやスキルをもった人材なのでしょうか。心理学部に「人工知能・認知科学専攻」を設置した追手門学院大学が目指すAI人材の姿を、連載でお伝えします。

高品質・大量生産の時代から、消費者の多様なニーズにいち早く応える力が問われる時代に変化している。そのような社会において、どのようなAI人材が活躍できるのか。そして、そういった人材を育てるために必要なこととは何だろうか。企業での豊富な研究経験をもつ、追手門学院大学の丸野進氏に話を聞いた。

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追手門学院大学 心理学部心理学科
人工知能・認知科学専攻 教授

丸野 進 氏 博士(工学

1978年に松下電器産業株式会社(現 パナソニック株式会社)入社。1987年~1989年に米国ユタ大学メディカルセンター客員科学研究員として神経生理、AI研究に従事。2001年以降、同社ヒューマンウェア研究所、知能情報技術研究所の所長を歴任し、2009年パナソニック株式会社の理事、技監に就任。2016年公益財団法人関西文化学術研究都市推進機構RDMM支援センター長に就任、2021年より現職。専門分野は知能情報処理、画像映像メディア処理、ニューロAI。

企業での経験から感じた人材育成への焦り

丸野氏は、大学卒業後に松下電器産業株式会社(現 パナソニック株式会社)に入社。人間が視覚情報をどのように脳内で処理しているのか、その仕組みに迫ると共に、「適応増殖ベクトル量子化ニューロン」を開発した。まるで人間の神経組織のように入力された信号に応じて人工ニューロンが増殖し、ネットワークを自己生成しながら学習を行う数理モデルだ。このモデルを使って、丸野氏は人間の視覚情報処理を模した画像の階調補正技術の開発を行った。  企業で各種研究開発や実用化、商品化に取り組み、研究開発部門を束ねる中で丸野氏は、日本の学生の多くは答えのある問いに対して正解を導くことには長けているが、それだけでは不十分だと考えていた。課題を見つけ出し、自 ら問いを立てられる人材の重要性を痛感したのだ。「社会に活きるAI人材の育成は、企業で取り組んでいては遅い。もっと先回りをして、中学・高校、大学でも取り組むべきだ」と考えるようになったという。

誰のための技術か?を考えられる人材

AI技術を社会に活かすためには、どのような考え方が重要なのだろうか。丸野氏は、「AI技術をどうこうしようと考える前に、そもそも社会や人々の生活の中にある課題が見えているかどうかが重要」と話す。「AI技術の活用には、まさに『他人のため』を考えられる人材が必要なのです」。AI技術はあくまで社会や人々の生活の中にある課題を解決するためにあるツールである、ということを忘れてはいけない。消費者ニーズが多様化する近代においては、人々が何を求めているのかを知り、それに応える力が試される。そういった点においても、自ら解決すべき課題を設定し、解決に向けて物事を進められる人材こそAI社会で活躍できるといえるだろう。

「人間」の理解には幅広い学びが必要

「AI研究とは何か。それは人間そのものの研究です」と丸野氏。例えば、人工知能領域の研究や技術は、情報工学の知識だけで成り立っているわけではない。人間そのものを追求して得られた叡智がその礎となっている。つまり、 AI技術の研究のためには、学問の発展により細分化していった分野を再び統合し、幅広い知識を融合させる必要があると丸野氏は考えているのだ。それに応えるように、追手門学院大学が新たに設置した専攻では文系・理系の枠にとらわれず、人工知能領域と認知科学領域の2つの領域を幅広く学ぶことができる。「人間や、その思考を司る脳に関心のある生徒にぜひ来てほしいですね」と丸野氏も期待を込める。人工知能領域だけでなく、幅広い学びの場を求める生徒には、ぜひ追手門学院大学の新専攻に挑戦してほしい。

追手門学院大学 心理学部 人工知能・認知科学専攻

入試情報、カリキュラム、所属教員等の詳細はこちらをご覧ください。

教育応援 vol. 51』より