サイエンスキャッスル

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既存の枠を越え、個人の「好き」で繋がる。サイエンスキャッスルは出会いの場

2020.09.29
既存の枠を越え、個人の「好き」で繋がる。サイエンスキャッスルは出会いの場

浦和実業学園高等学校
2年生 茂木 宏仁 くん 1年生 小川 莞生 くん

サイエンスキャッスル2019関東大会のポスター発表時に起きた出来事。茂木宏仁くんの発表を聞きに来た山形県鶴岡市の生徒と「昆虫」の話で意気投合した。サイエンスキャッスルは研究発表の場に加え、新しい研究仲間と出会う場なのだ。

歩行虫の研究が引き寄せた偶然の出会い

茂木 宏仁くんと、小川 莞生くんは浦和実業学園高等学校生物部の高校2年生と1年生。ふたりとも昆虫が大好きだ。生物部では、2008年から2018年までの10年間、群馬県片品村と静岡県南伊豆町の2地点で、歩行虫(甲虫目オサムシ科オサムシ亜科)の生態調査を継続的に実施してきた。片品村は、関東地方唯一の特別豪雪地帯で、夏季に昼夜の寒暖差が大きい場所である。一方、南伊豆町は、伊豆半島の最南端に位置し、町に流れる青野川の河口にはマングローブが形成されている。この2つの地点でそれぞれトラップを仕掛け、捕獲した歩行虫の種類や状態を比較している。そのポスター発表を聞いていたのが、山形県鶴岡市から来ていた生徒だ。

昆虫に対する想いが重なり意気投合

ポスター発表後に茂木くんは相手の研究内容も聞いてみた。すると、同じく昆虫の研究をしていることが分かったのだ。「彼が一番好きな昆虫はマイマイカブリで、僕も大好きな昆虫でした。マイマイカブリの幼虫は、カブトムシの幼虫などと違い、黒い甲冑に覆われているようでとてもかっこいいんです!気付いたらお互いタメ口で話をしていました」と目をキラキラさせる茂木くん。さらに話は盛り上がり、異なる手法で昆虫を採取していることや、鶴岡市には浦和市よりも遙かに多様な昆虫が生息していることを知ることができた。「図鑑でしか見たことがない昆虫が実際に採れるの?!すごい!」と夢中になって話し込み、時間があっという間に過ぎていった。「今まで昆虫について、こんなにも深い話ができるのは部活の仲間だけだと思っていました。学校の外に共感できる人がいることはとても驚きでした」。山形県の生徒とは、大学生になっても連絡を取り合いながら、一緒に研究をしていきたいと考えている。

研究仲間の輪を世界へ広げていく

そんなときに知ったのが、「土」をテーマとして国内と海外の学校が連携し研究を進める共同調査プロジェクトだ。歩行虫の生態は各地域の土壌成分によって大きく異なるため、研究仲間が国内外に広がれば、比較調査を進展させることができると考え、参加を決意した。現在、日本、シンガポール、マレーシア、フィリピンから7校が集まり、研究を始動させている。このプロジェクトでは、歩行虫の研究で培った経験をもとに、他チームと連携しながら土壌生態系、土壌と農作物、土木工学、土壌汚染のいずれかに関する研究を進めることになる。「サイエンスキャッスルでの出会いをきっかけに、僕たちの研究の世界が広がりました。国際共同研究では、海外の仲間と一緒に同じテーマで研究することがとても楽しみです」と意気込んでいる。

歩行虫は、羽は退化していて、飛べないが、敏速に歩行する昆虫。 あごが強く、ミミズ・カタツムリなどを食べる。

左:シデムシ科の昆虫
体長は3mm-30mmで、大顎が発達する。
触覚は先端が膨らんでいる。体型は平たく、体色は黒味を帯びるものが多い。多くが死肉食であるが、死体で発生するハエの幼虫も捕食する。

中央:オサムシ科の昆虫
世界中に25,000種が分布しているが、個体ごとの変異も観察され分類については専門的な知識が必要である。成虫の寿命は長く、数年に及ぶ。小動物や新鮮な死肉を摂食するが、雑食の傾向が強い。

右:ホソクビゴミムシ科の昆虫
体長は15mm前後であり、頭部と胸部が細長くオレンジ色を呈している。腹部腹板がゴミムシ類の6節と異なり、7-8節である。

※『教育応援 vol.47』から転載