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3.5億個の四面体が表現する、地殻の動き

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海洋研究開発機構
地震津波予測研究開発センター
地震予測研究グループ

縣 亮一郎 さん

私たちが踏み締めている大地の中ではどのような動きが起きているのか,皆さんは考えたことはありますか。JAMSTECの縣さんは,スーパーコンピュータ「京」を活用し,日本列島下の見えない大地を再現することで,地震などを引き起こす地殻の動きの解明に取り組んでいます。

目に見えない大地の動きを識る

地球の表面は,プレートとよばれる硬い岩盤がいくつもパズルのように組み合わさってできています。これらのプレートはそれぞれが違う方向に動くため,至る所で一方のプレートがもう一方のプレートに沈み込もうとしています。その際,硬く粘り気の少ないプレートには元の形に戻ろうとする大きな力が発生します。そしてその力が限界に達したとき,沈み込んだプレートが勢いよく元の形に戻ろうと跳ね上がるのです。この時の激しい地殻の動きを地震といいます。
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震の影響は,今もなお「余効変動(よこうへんどう)」というかたちで続いています。余効変動とは,大規模な地震後に発生する,揺れを起こさない地殻の動きです。沿岸地域における地殻の隆起や沈降など,私たちの生活に大きな影響を与えています。縣さんらは,東北地方太平洋沖地震で観察された余効変動の観測データを元に,地殻の動きをシミュレーション技術で再現し,地震発生要因の解明に取り組んでいます。

仮想の大地を動かす

これまでの研究で,余効変動にはプレート下のマントルの高速な動きが関わっている事が示唆されていました。しかしそれがどのようにして生じるのかは,はっきりと説明できないままでした。これまでの簡便なモデルでは再現できなかったマントルの動きを明らかにするため,地殻を構成する岩石それぞれの動きをシミュレーションする複雑な計算を取り入れることにしました。「自分たちの考えを証明するためには,岩石1つ1つの動きにまで着目した,手のこんだモデリングが必要だったんです」。そこで縣さんらは,3.5億個の四面体で日本列島周辺を構成する岩石を表現することにしました。それぞれの四面体に,岩石流動の実験則をもとにした性質を持たせ,実際にできる限り近づけたバーチャル日本列島を作ったのです。そして,スーパーコンピュータ「京」を用いた大規模な演算を行い,地殻の動きの再現を試みました。
その結果,これまでに観測されていた地殻変動の結果と,よく似た現象を再現することに成功しました。「今回の結果から,地震を始めとした地球の内部の動きが大きく関わる運動を再現するためには,岩石の性質を始めとした複合的な要素について検討する必要があることがわかりました」。

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▲︎ スーパーコンピュータ「京」を活用し、3.5億個の四面体によって再現された日本列島の様子。

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▲︎ 2011年東北地方太平洋沖地震後2.8年間の変位の観測値と計算値の比較。複雑な観測変位分布が計算によりよく再現されている。

過去を糧に,合理的に未来を想像する

今もなお世界各地では,地震や噴火などが発生し,私たちの生活に大きな影響を与えています。だからこそ私たちは限られた方法で得た情報や,過去の研究者たちの研究成果を武器に,その現象に仮説を立て,明らかにする必要があります。「シミュレーション技術は,計算を積み上げる,ともすれば人情味がない世界です。しかし,融通が利かないからこそ,ときにはおどろくほど実際の現象に近い結果が出ることもある。地球の仕組みを知るのにとても有効なアプローチ方法です」と語る縣さん。想定される地球の動きをパターン化し,全ての可能性を計算機上で表現する。シミュレーションモデルは,地球への理解をより深めることができる,人類が生み出した道標なのです。

(文・小玉 悠然)

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