サイエンスキャッスル

口頭発表 要旨 関西大会

大会名 口頭発表 要旨 関西大会

<O-01>
滋賀県・琵琶湖におけるミクラステリアス・ハーディの増殖に関する調査

代表研究者:川井彩音
共同研究者:松岡ほたか
所属:滋賀県立石山高等学校

研究分野:04.生物

<要旨>
研究対象である Micrasterias hardyi は2011年に琵琶湖で確認された植物プランクトンであり、近年優占した外来種である。対象を研究することは、琵琶湖における固有の生態系維持の観点から有意である。そこで本研究ではMicrasterias hardyi の増殖条件を調査すると共にこれまで琵琶湖で優占することが多かった在来種を同じ条件で培養し比較した。実験結果より、Micrasterias hardyi は25℃~30℃で最も増殖し、在来種よりも過酷な条件に強いことが明らかとなった。

研究概要
本研究では、Micrasterias hardyi の増殖条件について調査し、Micrasterias hardyi がなぜ優占したのかを明らかにすることを目的とした。 Micrasterias hardyi は 2011年に初めて琵琶湖で確認された外来種で、琵琶湖において優占となっている大型植物プランクトンである。植物プランクトンは1次生産者であり生態系において大きな役割を担っているため、外来植物プランクトンの侵入は湖沼における在来生物の生物多様性や生態系機能に対して大きく影響を与える。 琵琶湖の在来植物プランクトンと比べてMicrasterias hardyiは大型であるのでミジンコなどの大型動物プランクトンが捕食できず、生き残りやすいために琵琶湖の在来種に比べて生存率が高くなったと考えた。同じツヅミモ科であり、これまで優占することが多かった在来種のStaurastrum dorsidentiferumを比較対象として同じ条件で増殖曲線を比較した場合Micrasterias hardyiの曲線は傾きが大きく増えやすいと予想した。

<イチ推しポイント>
私がプランクトンの研究に興味を持ったのは小学5年生の時です。 しばらく琵琶湖の生物を観察していく中でミクラステリアス・ハーディを初めて目にしたときその美しさに心を奪われました。 しかしながらその美しさにはトゲがあり、琵琶湖の生物多様性に大きな影響を与える可能性も見えてきました。なぜここまで増えてしまったのでしょうか? 私はその美しさと謎めいたところにこの研究の魅力を感じています。

<O-02>
離島・都市部との比較から見る里山環境

代表研究者:岸田健吾
共同研究者:溝上幸太、伊藤聡馬
所属:和歌山県立向陽中学校

研究分野:04.生物

<要旨>
私たちの学校では長年、孟子不動谷の里山で生物調査を実施してきた。そして、昨年度は、他地域の生物と比較することを目的にして離島や都市部でも調査を行った。離島と本州ではあまり差はないと予想していたが、里山には、離島や都市部に比べて多様な生物が生息していることが分かった。その理由として、里山は人間の手により生態系が保全されてきたことが挙げられる。この研究を通して、今後も孟子不動谷をはじめとする生物の調査を続けていきたいと考えた。

研究概要
近年、生態系の破壊、環境保全などが叫ばれている。具体的には、海洋プラスチックゴミの問題、地球温暖化とそれに伴う海面の上昇、そして外来生物問題などである。この中でも特に、外来生物(生態系)の問題は、他の2つに比べてあまり注目されていない。それ故、我々はこの問題を解決するためにはどのような目標を掲げ、どのようなプロセスを踏めばよいのかを完全には理解していないのではないだろうか。本研究は、上記のことを理解する第一歩となることを期待して行われたものである。そして、異なる環境の生態系を調査し、それらの生物多様性を比較して考察することを目的とした。本研究に関する具体的な仮説としては、?開発が進み生物の棲みやすい環境が少ない都市部に比べ、比較的開発が進んでおらず自然の環境が多く見られる離島や里山の方が、生物の多様性に富んでいるのではないか。?また、特に離島は人の手がほとんど入っていないため、より自然な形の生態系が確立され、生物の多様性が顕著であると推測される。という2点を挙げる。

<イチ推しポイント>
私たちは、環境問題への注目が非常に高くなっている昨今、具体的に何をすればよいのかを我々は理解していないのではないかという点を、課題として受け止めた。 本研究テーマは、これを明らかにすることで環境問題の早期解決につなげるだけでなく、世間の環境問題に対する意識を変えることもできると考える。 また、比較的近い距離にありながらも全く異なる環境を定期的かつ継続的に調査することによって、より信頼性及び学術的価値の高い資料を収集することを目指した。

<O-03>
ゲンジボタルが三面コンクリート水路に生息するには

代表研究者:松尾
共同研究者:池川 智貴、梅川 翔平
所属:大阪府立富田林高校科学部ホタル班

研究分野:04.生物

<要旨>
畑田水路は,三面コンクリート張り水路にも関わらず,毎年ゲンジボタルの発光が観察できる。生息条件が悪いと考えられるコンクリート水路で,本種がどのように生息しているのか明らかにすることを試みた。コンクリートユニットの形状,流速,礫の堆積,本種を含む生物の生息状況について調査した。幅の広いユニットでは流速が低下し,礫が堆積してゲンジボタルを含む多くの生物が生息した。以上のことから,コンクリート水路で本種が生息できる環境には水流の減速と礫の堆積のメカニズムが必要だと考えられる。

研究概要
ゲンジボタルの幼虫(図1)は流速1cm/s~30cm/sや10cm/s~40cm/sと流れが遅い場所に好んで生息すると言われている。また,ゲンジボタルは肉食性でカワニナを食べて生活している。毎年5月頃に川から出て土の中に潜りサナギになり,6月頃に土から出て成虫になる。一方,カワニナは砂礫底や砂泥底に生息する。一般的に川や水路をコンクリートで護岸すると流速が速くなり,礫が流されやすく堆積しにくいため,ゲンジボタルやカワニナの生息に適さないと考えられる。しかし,千早川(大和川水系)から分岐している畑田水路では三面コンクリートの水路にも関わらず,毎年6月頃になるとゲンジボタルの成虫の発光が確認できる。なぜ,ゲンジボタルが生息に適さないと考えられている三面コンクリート水路に生息しているのか疑問に思い,その疑問を明らかにするため研究を行った。

<イチ推しポイント>
私がこのテーマに興味を持った理由はゲンジボタルが三面コンクリートの水路に生息しているという理由にある。ゲンジボタルは三面コンクリート水路の環境では生息しにくいが,10cmの窪みや壁の拡幅といった僅かな違いが生息環境を生み出し,その環境に多くの生物が生息している。このようにコンクリートユニットでも少しの工夫で自然が作られ,生物多様性が生み出せるということがこのテーマのイチオシポイントである。

<O-04>
ポリグルタミン酸を用いた水質浄化とその応用の研究

代表研究者:倉冨 星衣
共同研究者:伊藤 悠之助、恵川 陽都、帖佐 遥夢
所属:追手門学院大手前高等学校

研究分野:01.環境、08.工学

<要旨>
納豆菌に含まれるポリグルタミン酸には吸着作用があり、水質浄化の研究をこれまで行ってきた。定質的な実験効果を得ることはできたが、定量的な検証はできていないことから、ポリグルタミン酸の水質浄化能力について検証した。池の汚水を浄化するだけではなく、コーラのような液体も浄化する効力があることが分かった。そしてこれまで培ってきたロボット技術も用いて、海に流出した重油を回収するシステムを開発し、SDGs No,14でもある「海の豊かさを守ろう」の実現を目指した。

研究概要
2018年9月、関西国際空港につながる連絡橋に、台風21号による強風でタンカーが衝突するという事故が発生した。その事故でタンカーから重油が漏れ出すという二次被害はなかったが、もし流出した場合、重油がどのような影響を及ぼすかを調べた。重油が海に漏れ出ると、環境や生態系、人間、そしてその土地の産業にも大きな影響を及ぼすことが分かった。また今年7月、インド洋に浮かぶ島国のひとつであるモーリシャスで船が座礁したことで、燃料が流出する事故が発生し、大きな被害が出ていることも報告されている。また、過去に私たちのクラブでは、水質浄化についての研究を行っていた。そこで私たちは、ポリグルタミン酸を用いた水質浄化剤を使用して、流出した重油を迅速に回収することができると考えた。今回は、水質浄化剤にどれほどの浄水能力があるかを調べるために、身の回りの液体を用いて浄水実験を行った。

<イチ推しポイント>
以前、実際にポリグルタミン酸を用いた水質浄化剤を開発し、世界各地で水問題に取り組んでいる小田兼敏さんという方とお会いし、お話を聴く機会があった。そこで、実際に浄水の様子や、小田さんの理念について聴き、自分たち高校生の力でも、問題に取り組むことができないかと考え、今回の研究開発を始めた。私たちのシステムは動力を使わずに浄水を行うため、どんな場所で重油が漏れ出ても回収できる。世界に綺麗な水をもたらし、平和な社会をつくる画期的なシステムといえる。

<O-05>
微小重力下で永久磁石を用いた固体粒子の分離・同定

代表研究者:間石 啓太
共同研究者:岡田 京弥、鷲見 楠紀、岩本 亮太、藤谷 まい、岩本 あすか、北田 悟、花﨑 卓哉、奥野 優一郎、松坂 柊、和田 章久
所属:大阪府立春日丘高等学校 定時制科学部

研究分野:06.物理、12.惑星科学

<要旨>
微小重力下で単調減少する磁場中に解放された固体粒子は並進運動するが。その速度は粒子の質量に依存せず物質固有の磁化率のみに依存する。この原理を用いて、小型ネオジム磁石と自作微小重力発生装置で、反磁性固体粒子を、物質の種類ごとに分離・回収できる事を実証した。無機物質6種と有機物質6種の粒子は、回収板上に物質ごとに異なる粒子群として回収された。精密分析に先立って固体混合物を物質の種類ごとに分離する固体版クロマトグラフィ技術として期待できる。

研究概要
われわれは、微小重力発生装置で小型ネオジム磁石の磁場勾配を利用して反磁性物質を並進運動させ、その磁化率を測定してきた。この実験方法は、磁気的エネルギーと運動エネルギーの保存則に基づいており、質量に依存しない。すなわち、同一の試料であれば試料の大きさに関わらず同一速度で並進運動をする。この実験方法で質量非依存性を確認できた。そこで、この特徴を利用して、磁化率の違いで固体粒子混合物を物質の種類ごとに磁気分離できないかと考えた。 有機化学や生化学の分野では、精密分析に先立って有機分子の混合物を分子量ごとに分離するガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーの技術が確立している。固体粒子の混合物においては、効率よく分離する方法はまだ確立されていない。われわれが提案する磁気分離の方法は、原理的には全ての反磁性物質でそれが実現する。固体クロマトグラフィーとして新しい固体物質分離法として確立することを目的として実験を行った。

<イチ推しポイント>
この実験方法は、磁気的エネルギーと運動エネルギーの保存則に基づいており、磁化率は試料の速度により決定され、質量に依存しない。すなわち、同一の試料であれば試料の大きさに関わらず同一速度で並進運動をする。この実験方法は質量を測定しなくても磁化率χを求めることができるのが利点である。どんなに小さな粒子でもカメラで捉えることができ、回収板上で位置を確認できれば、試料を同定できるということである。新しい分離方法、分析方法として確立できればうれしい。

<O-06>
水中の浮力の起源に迫る!

代表研究者:大本 理子
共同研究者:金沢 真、西村 聖菜
所属:大谷中学校・高等学校

研究分野:05.化学、06.物理、08.工学、13.教育

<要旨>
分子衝突理論に基づき、水深が深まると水圧が増加するメカニズムを説明する新しい理論モデルを提唱した。ファンデルワールスの状態方程式をヒントに、水分子の体積と分子間衝突および、分子間力を考慮した考察を行った。重力場の影響により水深が深まるにつれて数密度が増え、排除体積が増大して水分子が自由に動き回れる空間が減る一方、平均自由行程も短くなる。その結果、壁面への衝突座標がLJポテンシャルの最安定距離に近づくため、衝突速度が最高速度に近づくことが示唆された。

研究概要
なぜ巨大なタンカーは水に浮くことができるのか。浮力については高校物理でアルキメデスの原理について触れられており、物体が押しのけた流体の重さに等しい大きさの浮力を鉛直上向きに受けることを学ぶ。その力はパスカルの原理に基づき、物体の上面と下面が受ける流体による圧力差によって生じると説明される。しかし、圧力の発生メカニズムが流体の重さで便宜的に説明されているため、底面が完全に水底に密着した物体や橋桁にも浮力がはたらいているなどの誤解が散見される。実際、浮力を巡るこの種の議論は、日本では過去に論争になった。そこで私達は、水中の物体にはたらく圧力が水分子の衝突で生じ、浮力が物体の上下面での水分子の衝突回数差で生じることを示し、論争に理論上の決着をつけることを目標とした。まずは単純分子衝突理論による考察から始め、その問題点について整理した上で、分子間相互作用を考慮に入れた総合的な分子衝突理論のモデルを追求した。

<イチ推しポイント>
この研究に興味を持ったきっかけは、「水の底にぴったりとすきまなく沈んだ物体に浮力ははたらくのか?」と、科学部顧問の先生から投げかけられた問いです。日本の科学界においてもかつて論争となったと聞き、証明されていない問いに答えを見つけてみたいと思いました。この研究を通じて水分子は水中でどのような動きをしているかなど色々なことを考えることができて、楽しかったです。単純な衝突理論ではなく、様々な数式を用いて、分子間力や分子間衝突などの分子間相互作用を考慮して多角的に考察した点がイチオシです。

<O-07>
花みょうがの不可食部の抗酸化能

代表研究者:黒田 愛
共同研究者:源 優介、野呂 淳史、出雲 楓乃、千 愛里、小栗 玲、石垣 心
所属:西大和学園高等学校

研究分野:05.化学、07.農学、10.食料

<要旨>
我々は、大和野菜である花みょうがの不可食部の抗酸化能を調べ、不可食部の有効活用ができないかなどを目的として研究を行った。 現時点では、花みょうがからの抽出液を薄層クロマトグラフィーで展開した結果、複数の抗酸化物質含んでいることが示唆された。 今後は、ポジティブコントロールによる実験結果の信頼性の確保や、Rf値からの抗酸化物質の同定、DPPHラジカル消去による抗酸化力の測定を試みる。

研究概要
近年、健康志向の高まりによって抗酸化物質に注目が集まっている。抗酸化物質とは、体内での過剰な酸化作用を抑える働きがあり、 過剰な酸化作用は、DNAや細胞を酸化ストレス負荷の状態にし、疾患を引き起こす原因になると考えられている。 我々は、大和野菜である花みょうがの不可食部からの抗酸化物質の抽出とその抗酸化力を測定を行い、花みょうがの抗酸化能を明らかにする。多くの植物と同様に、抗酸化物質が含まれていると思われ、不可食部の有効活用や、大和野菜の知名度の高まりが期待できる。

<イチ推しポイント>
この研究に興味を持ったきっかけは、商品のパッケージなどにポリフェノールといった記述があり、体が酸化されて老化が進行したり、病気になりやすくなると知ったからだ。 この研究のポイントは大和野菜という地域に密接したものを題材にして研究を行い、またその不可食部を取り上げることで、他の同様の研究とは差別化されている点である。

<O-08>
農業ハウスコントロールシステムの開発

代表研究者:管波 光騎
共同研究者:穐山 泰知、緒方 智晴、片山 斗希哉、影山 裕也、西田 有摩
所属:岡山県立岡山一宮高等学校

研究分野:08.工学、11.数理・情報科学

<要旨>
本研究は、農業用ハウスを使用している農業従事者の負担を軽減すること、緊急時に即刻対応を取れるようにすることを目的にした。 農業用ハウス内に設置した各センサからデータを取得し、 ハウス内の情報をWebサイト上から確認できるようにし、DB上にサンプリングを行った。 また同Webサイトに指示を行う機能を付随し、 ハウスにある照明や換気扇などを遠隔操作できるようにした。 DBを基にしてAI開発などに応用が利くものと考えられる。

研究概要
これらの原因は他の職業に比べ、農家の人への身体的負担が大きいことに加え、農家の感覚に依るところが大きく労働者の確保に時間がかかることだと仮定した。そこで、農業従事者の増加を促すため農作物の生産に必要な負担を軽減し、作業を簡易化する。① 農家の感覚を機械(AI)が習得・再現し、代替労働力とする。② 上記2つを目的とする。ただし②についてはAIを作るためのデータが不足しているためすぐに始めることは難しい。よって本研究では①を主目的としながら実際にビッグデータを収集することで②の下地を敷くことを考え「リモートコントロールシステムの開発」を行うこととした。また岡山県立興陽高等学校と連携して開発することで実際のハウスについての視察や先行研究に関するデータを頂いた。

<イチ推しポイント>
課題研究の研究テーマを考えていた当時、友人が農家の家系であることがきっかけで農業に対して関心が高まっており、その時ちょうど興陽高校からのお誘いがあり、 農業について質問があれば直ぐに聞きに行くことができる環境や 情報×農業という一宮高等学校での課題研究では異例の試みであること等が 私たちの制作意欲を駆り立てとっさに「これだ!」と直感しました。 そこでその友人や他のメンバーを誘い活動を開始しました。