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課題研究の相談窓口通信(2016年7月19日号)「真似をさせない仕組みが、創造力を駆り立てるー研究と知的財産権ー」
2016.07.19<PDFファイルのダウンロードはこちらから>
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2012年、秋田県の高校生が創作した発明が特許を取得し、商品として販売するまでに至っています。このように新たな研究成果が社会にでるときにしばしば重要になるのが、特許などを代表とする「知的財産権」の考え方です。みなさんが研究活動を進めるなか、今後必ず必要になる知的財産権について、専門家である大阪工業大学の箱田先生にお話を聞きました。
知的財産とは?
発明、それは暮らしのちょっとした不便を解消してくれる、新しいアイデアなどのことです。そんな発明は、簡単に生まれるものもあれば、多くの時間と研究費を費やして生まれるものもあります。発明は、人間の知的活動によって生み出される財産と考えられ、「知的財産」と呼ばれています。
カタチのないものを守るための知的財産権
土地・建物・車などを有形資産と呼ぶのに対して、知的財産は物理的形状を持たないため「無形資産」と呼ばれます。無形資産は、車のように鍵をかけておくこともできず、簡単に盗まれてしまう危険性があります。そのため、自分自身が最初に発明したものであっても、それを聞いた他者が「自分が先に考えついた」と公言したり、他者に真似されたりしてしまうのです。このような事態を避けるために存在するのが、知的財産を守るための権利である「知的財産権」というものです。
知的財産権は、独占するためだけのもの?
一方この権利は、他者からみれば、発明者にアイデアの独占を許すものだとも言えます。しかし、箱田先生は「この権利の存在意義は、アイデアを独占することではなく、企業や研究者などが『知的創造サイクル』をより加速させるためのものである」と考えています。知的創造サイクルとは、①優れた研究成果を真似されないように権利化し、②その権利を使って作った製品を販売し、また、別の企業に権利を貸与すること等によって、対価を受け取り、③その資金をもとに再び新しい研究開発に取り組むという一連の流れを意味します。「このサイクルを各企業が回すことで、その企業ならではの製品開発を加速させることができる」と箱田先生は言います。
日本の再生医療分野を躍動させる知財戦略
箱田先生の専門である再生医療分野に関しては、そのサイクルはより一層活発だといえるでしょう。iPS細胞により注目の的となったこの分野は、世界中の企業・大学が研究を行い、現在では患者への「応用化」に関する新しい発明が、日本や欧米から多く出てきています。日本は再生医療分野の基本発明であるiPS細胞の権利を持っているというメリットがありますが、応用化では欧米が先を走っていて、例えば応用化に関連する特許を他社、特には外国の会社に取られてしまえば、実用化への妨げになるかもしれません。そうならないためにも、いかに知的創造サイクルを回し、日本の企業・大学の創造性を駆り立てていくのかという戦略を提案することで、箱田先生は再生医療に貢献しているのです。
<取材した先生> 大阪工業大学専門職大学院知的財産研究科 箱田 聖二 教授 九州大学大学院農学研究科を修了後、武田薬品工業株式会社に入社。中央研究所にて、抗がん剤などの研究に従事したあと、知的財産部へ異動。医薬品及びバイオ関係の特許業務を行った。2013年より大阪工業大学にて、前職で得た知識及び経験を生かし、医療分野における知的財産戦略の研究を行っている。 |
やってみよう!高校生特許の紹介! 特許の探し方・読み方をマスター!
手順1 特許を見つけよう! ❶検索サイトで「特許情報プラットフォー ム」を検索します ❷左上にある「特許・実用新案」をクリックします ❸「特許・実用新案番号照会」をクリックします ❹種別「公開・公表特許広報」の「番号」の項目に「2012-97061」と入力し、「照会」ボタンを押します 特開2012-97061の特許は、ヒル避け剤の開発で秋田県立金足農業高校の生徒が取得したもので、製品化もされています。 |
手順2 特許を読んでみよう! 特許はいくつかの項目で構成されています。 <特許の構成> ❶書誌的事項 ❷要約(課題、解決手段) ❸特許請求の範囲 ❹発明の詳細な説明 a.発明が解決しようとする課題 b.課題を解決するための手段 c.発明の効果 d.発明を実施するための形態❺図面 ❹を読んで全体像を理解してみましょう。特に ❸が知的財産として保護されている部分 です。他の人の発明がこの項目にあてはまる と特許侵害となります。他にも、高校生の特 許はあるので是非見てみましょう。特開 2009-165445(茨城県立水戸農業高校)、 特開2015-133912(千葉県立成田西陵高校) |
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研究実践パートナー大学 ものづくり部門 大阪工業大学 |
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