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研究者に会いに行こう〜東京薬科大学 藤川 雄太さん

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がん細胞に多く存在するタンパク質のはたらきを、化学物質で光らせることでがん細胞を可視化する。東京薬科大学分子生物化学研究室の藤川雄太さんは、生命の仕組みを化学の力で解明しようとしている科学者だ。
「わからないことを知りたい」これが藤川さんが研究者になったきっかけらしい。

世の中、わからないことだらけ!

きっかけはテレビ番組。
藤川さんが研究者になることを意識したのは高校生の頃にテレビで免疫の特集を見たことがきっかけだという。

藤川さん「ちょうどその頃学校でも免疫を授業で習っていたんですが、教科書よりも世の中の研究ははるかに進んでいました。それでも未解明なこともまだたくさんあると知って、大きな衝撃を受けました」

免疫についてもっと知りたいと思い、藤川さんは薬学部のある大学へ進学した。大学生になってからは、はやくから実験をやってみたいと考えた。
そこでおなじ大学の医学部の研究室が募集していた研究アシスタントのアルバイトに応募し、学部の時から実験操作に触れることができた。

人と出会うことで自分の世界が広がる

「まだ見ぬワクワクに出会えるかもしれない。それがもしかしたら外の世界にあるかもしれないと考えました」
大学院の研究室を選ぶ際、自分がいる大学の研究室に残るか、他の大学院へ行くかに悩んだ藤川さん。
人に会って知らない話を聞くことが好きだという、もともとの性格もあり、沢山の研究室を訪問し、多くの先生に話を聞いた。その過程で出会った教授の話を聞いて、ピンときたという。
「思い返すと、教授の研究の話は、難しすぎてわからなかったんです。でも先生の姿勢や情熱に惹かれ、この先生の元で研究をやりたいと思いました」
大学院に進もうと考えた研究室では蛍光物質を作ることで生体内に存在する分子を可視化することをおこなっていた。

藤川さんが現在おこなっている研究は、ここから始まった

「仕組みを知る」ことで予想外の結果が見えてきた
グルタチオン – 転移酵素(GST)は多くの細胞に存在し、生体内で発生する活性酸素などを取り除く機能を持つ。
一方で、藤川さんの研究では、がん細胞に多く現れているGSTの一種であるGSTPに着目している。GSTPは30年以上も前に胎盤で見つかったGSTだ。

「このGSTPはいまだに謎が多いんです。なぜ胎盤にすごくたくさん存在するタンパクが、がん細胞にも存在しているのか。一方で、全てのがんにあるわけではなく、GSTPの発現がむしろ抑えられているがんもある。生体内でどのような仕組みがはたらいているのか。なんで全てのがんで現れていないのかとても興味があります」
そう語る藤川さん。これらの疑問に答えるため、彼の研究ではGSTPのはたらきによって反応を受けると光る蛍光物質を自ら作り出した。そのはたらきを見えるようにすることで、予想外にも同じがん細胞の中でも活性レベルが異なるものがいるということが明らかとなってきた。

失敗から学びを得る

研究はうまくいかないことが多い。
「『これはいけるかもしれない』という研究者の勘は外れることの方が多いはずです。でも、うまくいかなかったからダメであったということではない。ゴールから遠ざかるような気がするけれど、その失敗から多くのことを学ぶことできたら、結果的にはゴールに近づくんじゃないかと思うのです。つまり、失敗してもいい。失敗した後、いかに自分で考えるかということが大事なんだと思います。これって僕らが生きていく上でも大切にしたいことですよね」

うまくいかなかったからそこで諦めるのではなく、吸収して学びに変えていくことこそ、成功につながっていくのかもしれない。

(文・新庄 晃太郎)(編・高村 光)

藤川 雄太(ふじかわ ゆうた)プロフィール
2009 年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。ドイツがん研究センター研究員、日本学術振興会海外特別研究員を経て2012年より現職。がん細胞に存在している酵素を可視化する蛍光物質の開発研究に携わる傍ら、東京薬科大学が選定された私立大学研究ブランディング事業にて、新しい薬の元となる化合物の探索にも携わる。

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