ホーム 先生向け情報 【特集】③ 未来への結い目となれ!フィリピンの課題群に技術系起業家が挑む

【特集】③ 未来への結い目となれ!フィリピンの課題群に技術系起業家が挑む

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急速な人口増加と生活水準の向上、そして経済発展が目まぐるしいフィリピンでは、廃棄されるゴミの量も年々増え続けている。排出されるゴミは海洋環境を汚染したり、排水溝に詰まって洪水の被害を拡大してしまうなど、大きな社会問題となっている。ロリリーン・ダキオアグさんは、こうしたゴミのうち生分解性のものを有機肥料へ変えるサービスを展開するスタートアップ企業“Waste4Good”を立ち上げた。なぜ彼女がビジネスを立ち上げたのか、そしてどんなゴールを見据えているのか、話を伺った。

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Waste4Good CEO
ロリリーン・ダキオアグ さん
Lorilyn Daquioag

複数の企業を経て大学講師を勤めた後、有機ゴミを分解する溶液を提供するスタートアップWaste4Goodと、フィリピンミンダナオ島のコーヒー農業のサポートするSultan Kudarat Beans を立ち上げた。また並行して、フィリピン大学の研究員として衛星技術の開発にも携わっている。

いつも身近にあったゴミをどうにかしたい

 フィリピン環境庁にあるNational Solid Waste Management Commission の過去の調査によると、2016年には40万トンのゴミが1日に排出されていたという。人々の生活の身近なところに、ゴミは溢れていた。研究者であり学生、そして母親でもあるロリリーンさんの専門はエンジニアリング。子供の頃から、人を助け社会に役に立つものを作りたいと思っていた。あるとき、ロリリーンさんは、40万トンのゴミのうち、約半分が食べ物や植物など生分解性であることに着目し、それらを肥料に変える微生物を含む液剤を開発した。そして現在、Waste4Goodの社長として、フィリピンのゴミ問題を解決するため奔走している。

衛生技術を開発するフィリピン大学の研究メンバー
衛生技術を開発するフィリピン大学の研究メンバー

スタートアップ企業を立ち上げた理由

日本を始め多くの国では、国や自治体がゴミ処理の機能を担っている。一方で、ロリリーンさんはフィリピン国内のゴミ問題を、自らスタートアップ企業を立ち上げて解決しようとしているのはなぜなのか。ロリリーンさんは、こう答える。「スタートアップを立ち上げることは、2つメリットがあります。一つは解決へのアクションを起こすまでのスピードを早めることができます。政府へ働きかけることは、不可能ではありませんが容易ではありません。また、多くの場合、長い時間が掛かります。もう一つは、フィリピン国内で会社を立ち上げることで、雇用の機会を生み出すことができることです。フィリピンでは、多くの人材が国外へ渡って仕事をしています。私は、少しでも多くの優秀な人たちが母国で働く機会を得て欲しいと思っているのです」。

開発した液剤を畑に投与する様子。植物が大きく育っている。
開発した液剤を畑に投与する様子。植物が大きく育っている。

ビジョンを共に、異なるスキルをもった仲間が集う

設立当初、Waste4Goodのメンバーは4名だった。「良いチームの条件は、ビジョンや目的を共有していること。そしてそれぞれが異なるスキルや専門性を活かせることです」。そして、最近、新しく経営学の専門性を持った人と、土壌科学と有機農業の専門性を持った人を新しいメンバーとして迎えたという。COVID-19の感染が拡大する中で、そのメンバーとは一度も直接会ったことがないというが、課題意識と解決方法にとても共感してくれているという。今後、より複雑になる社会課題をチームで解決するためには、共感し合えるビジョンをもち、様々な専門性を持つ人たちが集まることがとても重要になるだろう。

次の世代につないでいく

国をより良くするために起業をすることは、フィリピンではまだ、たくさんの人が実践できることではない。「多くの子供たちは、一生懸命勉強して良い大学に行き、良い会社に就職することが良いことだと家庭内で教えられてて育ちます。そして、情熱と才能に溢れるフィリピンの若い世代は、より良いチャンスを求めて国外へ出ていってしまうのです」とロリリーンさんは言う。しかし彼女は、同時に、この状況は変えることができると強く信じている。「そのための一つ有効な手段が、国内で会社を立ち上げ、雇用の機会を生むことなのです」。ロリリーンさんは、自身が立ち上げた会社を軌道に乗せるため奔走するかたわら、国の未来を担う若い世代の人材育成にも関わっていきたいと、大学でアントレプレナーシップ講座の開設を進めている。自分たちの目の前のゴミ問題を解決するため、そして彼女に続く次代を育成するため、ロリリーンさんはこれからも挑戦し続ける。

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教育応援vol. 49』より

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