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モノとエネルギーが循環するリサイクル社会の実現にむけて

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世界各国がCO₂排出を抑制し、排出量収支がゼロとなるカーボンニュートラル社会にむけ動き出している。これを実現するためには、今や社会を支える材料となっているプラスチックのリサイクルシステムを大きく変化させることが重要だ。炭素資源の新規投入量を減らし、利用可能な資源を最大限循環させるしくみを、どう作っていくことができるだろうか。

取材協力

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株式会社荏原製作所
環境事業カンパニー
事業企画部 部長
檀恵(せんだん けいじ)氏

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荏原環境プラント株式会社
共通基盤本部開発部
新技術開発課 課長
井原貴行(いはら たかゆき)氏

カーボンニュートラル実現に必要となるリサイクル技術

カーボンニュートラルとはCO2の排出量と吸収量の差し引きがゼロの状態を指す。現在は燃料や廃棄物の燃焼によりCO2が排出され、それが森林や藻類などによる吸収量を上回っている状態だ。そのため、再生可能エネルギー利用の拡大による燃料使用の減少、製品材料の変更や新しいリサイクル技術による廃棄物の減少によって排出量を減らしていくこと、そして利用可能な資源を最大限循環させるしくみ作りが求められている。
社会にあふれるプラスチック製品は現状、そのほとんどが燃やされている。2019年のデータでは日本国内において約850万トンのプラスチックが廃棄されており、燃焼時の熱エネルギー を回収して活かすサーマルリサイクルを含めて64%が燃焼処理されている。粉砕・選別・洗浄し、再度製品の原料に回るマテリアルリサイクルは22%。そして小さな分子に分解して化学工業原料として再利用するケミカルリサイクルは3%にすぎない。
ゴミ処理によるCO2 の排出量を減らし、廃プラスチックを資源として循環させるためには、後者2つの割合を高めていくことが必要だが、まだ課題は多い。例えばマテリアルリサイクルは、 現状は再資源化できる材料の種類に限りがあり、また汚れたま まだったり複数種類の材料が混ざっていると品質が低下してし まう。そのため、単一原料であることがわかりやすいペットボトルでは高い割合でリサイクルが進んでいるが、食品や日用品の包装材料など材料ごとにきれいにして分別しづらいものでは難 しく、今後さらにバイオマス由来プラスチックなど新しい材料が増えるほど、正しく分別するのが困難になるだろう。そこで期待されるのが、汚れていたり材料が混ざっていても処理できるケミカルリサイクルだ。

CO2を8割減らし 、資源を循環させる

ケミカルリサイクルは、廃棄物を高熱で分解し、水素や一酸化炭素、エチレンやプロピレンなどを抽出する技術だ。例えば荏原環境プラント株式会社が開発するICFG®内部循環流動床ガス化システムという方式では、炉が熱分解室と媒体再生室の2室に分かれた構造をしている。投入された廃棄物は、熱分解室で高熱により分解され化学原料ガス等が取り出される。そこで分解しきれなかった残渣はもう一方の媒体再生室に送られて燃やされ、その燃焼熱が熱分解室の熱分解に利用される。
通常、1トンのプラスチックを燃やすと3トンのCO₂が排出されるが、可能な限りガスやオイルの形で炭素資源を抽出することで、ケミカルリサイクルでは排出量を約8割抑えることができるという。2006年までに1日8トンの廃プラスチックを投入して可燃性ガスを得るケミカルリサイクルの実証試験が長期間行われたものの、ただ燃焼するのと比較してコストが高いこともあり、当時は今ほどの社会的なニーズがなく普及に至らなかったという。その当時と比較して、今は環境負荷低減への取り組みが企業価値に直結するようになっており、ケミカルリサイクル技術を社会に導入する必要性が増している。
ただ、活用には課題もある。ICFG®の場合は廃プラスチックのほかに都市ごみやバイオマスといった多様な廃棄物受け入れられる分、抽出できる炭素資源も多様になる。熱分解の条件によっても抽出物は変わるため、材料を利用する化学メーカーなどと連携して、どう使うかまでを考えて施設設計を考えていく必要があるのだ。「実運用されている施設がまだ世の中に無いため、その価値を理解してもらいにくいのも課題です。まずは中規模の施設を実現し、多くの目に見える形にすることで、社会にこの技術を知ってもらいたいと考えています」と荏原製作所の栴檀恵治氏は話す。

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理想の未来に向けて選択肢を増やす

2015年9月の国連サミットにてSDGsが発表されて早6年、個人、そして企業の環境意識は向上しているが、どのような形の社会であれば真に持続可能なのだろうか。様々な廃棄物を材料ごとに分別し、洗浄して輸送し、再び原料化できる社会は理想的に思えるかもしれないが、そのひとつひとつの工程にエネルギーが必要となるし、きれいに分別するには人々の不断の努力が欠かせない。「多様なゴミをまとめて再資源化できるICFG®を用いたケミカルリサイクルは、ちょっとゆるいリサイクルを実現する技術ともいえます」と栴檀氏は言う。
マテリアルリサイクルとケミカルリサイクル、サーマルリサイクルをどういうバランスにしていくことが最適なのかは、まだわからない。だからこそ、新しいリサイクル技術を実現するとともに、そこで再資源化された原料やバイオマス由来原料などを活用した製品製造技術を開発、実証、普及していくことで、選択肢を増やしていくことが必要となる。そして目の前のゴミを分別するだけで満足するのでなく、その先にどう処理されているのかを調べ、今よりも良い状態を考えていくことが、持続可能な社会の実現に繋がっていくはずだ。

教育応援 vol.51』より

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